だから、せめてもの、愛。 公演情報 TAAC「だから、せめてもの、愛。」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     “人生は近くで見ると悲劇だが、遠くから眺めると喜劇である。”という有名なフレーズがあるが、

    ネタバレBOX

    今作もその通りの内容になっている。余命半年を宣告された父・正と連れ合い・明子の愛も、実子ではない長男・康介への思いやりが実子で次男の亮二に与える心理的影も、康介が倒れた母の介護をまめまめしく務めるのも、実子でも無い自分を我が子以上と言えるほどに可愛がってくれた両親に対する恩返しよりも、自分が家を離れたら家族の紐帯が失われてしまうという恐怖からであるとの自己認識を告白しているが、これら総てを載せて幾年もの年が流れ、父の日々は酒とパチンコの空回り。而も他界せず、無明を彷徨う。母は寝たきり。亮二と同棲中の彼女・楓が毎日明子の介護の手助けをしてくれている。その楓も妊娠、「サックをつけていたのに」と疑う亮二に愛想を尽かし掛ける楓だったが、亮二も何とか疑いを引込めうやむやの解決。何れにせよ新たに家族となった楓を含め、5人の家族の内ブレナイ2人が女性であるという点に現代日本社会の病巣が現れていよう。即ち敗戦以来、日本の男は自らの主権を失ったのである。このことが現在の日本総てに大きく深い底なしの沼を齎していそうである。日米地位協定の下、完全にアメリカの植民地として機能していることさえ認められない程に日本の男の主権は病んでいる。それが端的に現れているのが、父が警察に突き出されそうになった件で、たかだかイヤホンを叩き落としたことで康介や康介の劇団仲間・茂木までが警察に訴えられる云々で大騒ぎしている理由だろう。元々、悪いのは車中、デカい音で音楽を聴き注意されても馬鹿にしたような態度を取った若者だろう。世界中、どこでもそんな失礼な態度を取ったらガキがぶっ飛ばされるのは当たり前のことだ! と多少は何か国かで生活してきた自分は思うのだが。暴力を用いないというのであれば、徹底的に論理で遣り込める等主権を行使する主体を確保する道はあるハズだが、それをしてこなかったことが、今作の提示した意味ではあるまいか?

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    2019/12/27 01:24

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