かわいいチャージ’19 公演情報 人間嫌い「かわいいチャージ’19」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     メイド喫茶の話。(追記:2019.11.4 15:22)

    ネタバレBOX

    一頃、若い女の子多くが路上と謂わず、車中と謂わず大声で「かわい~~~っ」を連発していて、ファシズムの足音を聴くような気がして吐き気を催していたのだが、無論若い女の子のイメージとしてファシズムは似つかわしくない。それだけにこの連呼はより不気味に思えたのである。同じような表現の単純化に畳語の多用があった。何れも言語のデリカシーや階層性を破壊することによってコンセプトを平準化し以て感情や思惟のグラデーションを曖昧化すると同時に極端に個別化しその場に居る同世代の仲間にしか通用しない言語パフォーマンスと化し社会性を喪失すると同時に彼女らの本来の狙い、既存社会の価値観に対する対話不能の反感を示していた。大人達がこの不満を解決するのは、基本的に力関係即ち暴力や金力しかない、と考えるのは当然であろう。対話・討論そのものを拒否している者は、こちらが討議を持ち掛けても問答無用と応じる以外に無いからである。問題は、恐らく彼女達が大人とか大人社会と言ったもの・概念に一方で甘えつつ(例えば経済的に依存するとか、他方で援交や下着売買、出張デート等で荒稼ぎをする等、金を持つ男の性向を利用することによって、媚びと諂い、性を餌に人間性をかなぐり捨てる捨て鉢行為もあったのだろう。その捨て鉢感情と実利を繋ぐコンセプトこそが“かわいい”の本質であり、掛かるが故にこそ、店長・レナの妹・鈴奈は姉に対して此処まで反発するのであろう。無論、鈴奈にしても若い女の子としてちやほやされたい。然し姉とは異なり、自分には美しいとか可愛いとかとは反対の要素しかないと思い込んでおり、それが自己疎外感として定着しているというアンヴィヴァレンツを抱えている。女性の魅力を巡る基本的には異性からの評価が、恋を命の価値観に縛られがちな若い女性達だけに責任を押し付けることなどできないことは当然である。だが、彼女らに一点の瑕疵もない、と言えば嘘になろう。この辺りの微妙で多様な若い女性達の人生の綾が織りなす、女性ならではの視点で描かれた作品。誤解の無いよう付け加えておくなら、このメイドカフェオーナーのエリカは有名な国立大出、大手商社に勤めた後、20代で起業して現在幾つもの事業を経営するヤリ手実業家であり、この店は税金対策として趣味でやっていると従業員が噂するほどリッチ而も美人で28歳。秀才の常として世の中の関係を秤に掛け、的確に計量してクリティカルポイントでバランスを取る。必須成功パターンの実践者であるから、女性としての彼女の魅力も充分理解し起業にも企業経営にも利用している、無論、相手になってくれるパトロン達とベタな関係になって肝要な仕事をおっぽらかす原因となるような関係は決して持たないだけの知恵を具えている。これだけ高い能力と美貌、他人に好かれる為の柔軟さを具えながら、則を越えないのは天才の抱える不幸を己の内には抱えていないからである。一見、馬鹿っぽく見える新入りメイド、らぶはどう化けるかで大差が出るが、型破りな発想と独自性から天才と化ける可能性としては登場キャラの中で一番高かろう。尤も、天才と認められる一人の人間の足元には天才的な人間一万は居ると考えた場合の話だが。何れにせよ、見た目の評価が多くの人々にとって実際大きな意味を持つことは体験的に誰しも知る所、疎かにはできないが、人間的魅力というものは、単に生まれつきの美醜などで決まるほど単純なものでもなければ、底の浅いものでもない。己の魂の鍛え方、その上での生き様に左右され、決して誤魔化しの効かないものである。良い表情のできる人間になりたいものだ。そしてそのような表情ができる人々にこそ“深い可愛らしさ”というものが在るのではないか? 舞台美術も極めてお洒落である。

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    2019/11/04 12:55

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  • 皆さま
    少し追記しておきました。
           ハンダラ 拝

    2019/11/04 15:23

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