影ばさみ~「そこのそこ」より~ 公演情報 ThreeQuarter「 影ばさみ~「そこのそこ」より~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

     月の光を拝見。(華三つ☆)

    ネタバレBOX

     二代目代表引退企画でもある今作、にゃんと妖怪の話である。何でも浦島太郎もかぐや姫も狸だというから驚きだ、基本的に狐となるか狸となるか神の決定により定められた宿命であるからこれは受け入れるしかない。だが、今作は脚本の浅さに問題があるようにも思う。優れた脚本というものは、登場するキャラクターの総てが、観客の日常に繋がる価値観やジェンダーの中で抗いようの無い条件を科され、それに苦しみながらも必死に生きる姿を浮き彫りにすることで、ギリギリの生き様を葛藤そのものとして描くことによって成立する。それが悲劇であれ、喜劇であれ根本だろう。この基本が分かっていなければ、恒常的に優れた作品を書き続けることは決してできない。
     現代と200年前、妖怪と化け狸や化け狐と人間世界を繋ぐ為に、心霊スポットの取材という設定が為されているのだが、この設定でゆくなら、化け狸や化け狐のジェンダーを例えば人間に恐れられ掛かるが故に駆逐されてきた悲劇としてもっとキチンと描き込むと同時に刑部の力によって化けた獣から妖怪に変ずることのジェンダー差をキチンと描かなければ観客に対するインパクトが弱くなってしまう。
     或いは、それこそ「四谷怪談」のように真に社会的な(四谷怪談は伊右衛門が赤穂の浪士である所に歴史との極めて重要な関係があり、その意味で「忠臣蔵」の裏面と取ることもできるのだ)大事件をベースに、数々の比喩や怨念の持つ恐ろしさ、人間という生き物の持つエゴや執念、主と従、時代の倫理的理想と現状の乖離が齎す不満と民衆の反感、経済と精神との相関関係等々我らの生活感覚に深く根ざすと同時に、それらを原因として如何様な世界と世界観が成立し得るかを示して雄弁、否雄弁どころか、観る者をしてその余りのインパクト故に黙らせてしまうだけの力を持っているのだ。
     今作主題歌には千年の都としての歴史を持つ京の都に伝わる手毬歌をベースに作曲した歌が用いられ、舞台美術に込められた様々な意味も中々工夫されている。演技も悪く無い。勿体ないと思うのである。

    0

    2019/11/04 12:03

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大