妖異幻怪物語 公演情報 月ねこ座「妖異幻怪物語」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     脚本が素晴らしい。ニャン吉さんが脚本を書いているのだが、(追記2019.11.4・脚本華5つ☆全体華4つ☆)

    ネタバレBOX

    人間容認派(統領以外は殆ど弱い妖怪だがマジョリティーVS否認派妖怪(強く計算高い妖怪が結集・マイノリティー)を基本とした筋運び、各キャラクターの科白に込められた念の深さと人間などより遥かに長生きする妖怪の命を賭け、己以上の力を持つことが明らかな酒呑童子に挑み、姫を助け、守るべき者の危機にあっては己の命を的に助命嘆願する稲荷の純粋な念も素晴らしい。これらの行為総ての原動力こそ、女性の命である恋の力なのだが、千年にも及ぶ報われぬ恋の切なさの比類なさが我らの胸を撃つ、便乗神の起死回生の策略を成功に導く伏線ならしめた役割を担った雲外鏡は人間容認派を瓦解に導くスパイ役を果たすが、事情を十二分に理解した新統領・弾の赦しによってリーダーとしての彼の度量に打たれ、自ら信頼された者に成ろうと魂を入れ替える弱い存在の変化を演じて大事な役割を果たしている。この伏線があればこそ、便乗神の命を賭けての戦いと作戦の成功が有るのであり、恐らく彼女もまた、旧統領で弾の妻・妖子の父、九尾の狐を深く愛していたという含みがある。
    雲外鏡はその名前が示唆しているように、我らヒトを含めた生き物としての弱さと他者に信じられてこそ、強く逞しく正しく生き得ることの普遍性を顕しており、このことが伏線となって物語りの展開に因縁が絶妙なバランスを保ちつつ、結果として見事に呼応する様が描かれていることの見事さ、実際に起こるというか日々体験せざるを得ない、利害と命、最も大切な者を守る為、或いは目前の恐怖の為に曝け出される卑怯未練な振る舞い、とそのような行為に及んだ者に対するリーダーとしての対処に現れる度量の描き方、演じ方も見事である。また、妖怪同士の戦いの中での人間容認派と否定派の差異を人間との婚姻諾否の差で決定的に描いて見せる辺りの、的確にして的を射た世界把握と表現も素晴らしい。エンターテインメントという体裁を採りつつ基本をしっかり作っている。殺陣の際、酒呑童子側の刺客や雑兵として活躍するアンサンブルのメンバーの体術もキレがあって良い。
     人間否定派リーダーの酒呑童子の副官、絡新婦がオープニング早々、演説をぶつのだが、両手を広げてまるでTVのワイドショーで仰々しくミエミエのパフォーマンスをするようで、自分にはチャラついて見えたのが残念、演じるのは身長も高くグラマラスな美形女優なのだから、自分なら観衆のざわめく音声を入れ、少し間をとって、配下の妖怪たちの鳴りが収まるのを見計らって科白を吐くという演出にする。オープニングには、若く美しい女優をヴィジュアルで見せようとの狙いが見える気がして自分の好みではなかった。もう一段、女優個々の個性や魅力の深みを見せる演出であると嬉しい。何れにせよ、脇がしっかりしているのと脚本の素晴らしさ、主要キャラクターが物語りの進展に連れてドンドン良い方向(即ち役を生きる演技)になってゆくので観ているこちらとしてもどんどん引き込まれて行き中盤以降は伏線とその回収も見事な展開で、満足できる内容であった。当初、キャピキャピ感のあった女優陣、新リーダーになった弾の表情の変化(ぽにょん~締まりのある顔へ)妖怪の総大将であった九尾の狐の娘、妖子のキャピキャピで純な少女~姫としてまた新リーダーの妻として物理的な弱さは保ったまま、芯の強さ・精神の成長を通して強さと気品を身に着けてゆく姿の変化もグー、無論、キュートな魅力はそのままだ。人間に味方する側では、大家役(見送り入道)の演技もこちらサイドの若手演技を支えてグー。無論、今作で最も大事なシーンで中核を担い己の術(自分の受けたダメージをそっくり相手に返す術)を九尾の狐を守る為に用いて亡くなる便乗神役も魂に沁みるし、何の秘術も持たないが兎に角、自分の信じたことに命を賭け殺され掛かるスマホ覗きも、ホントに戦う為の能力を何ら持たぬ身で痛い目に遭っている仲間を唯庇おうとすることしかできない無力が、彼の痛々しい献身を見事に浮き上がらせる。烏天狗は一度は言葉によって姫を傷つけた者だが、彼も姫を愛し、独占したいと望む本能故、道には外れるかも知れないが、単純に非難はできない。 酒呑童子(体が頑丈で多くの妖魔を葬った名刀で切り付けても妖怪がその刀で切りつけたのではかすり傷一つ負わせることができない。可能性があるのは、人間が名刀を用いる時のみだが、効果は定かならず)サイドは強者揃いだ。五人の強者、絡新婦・茨木童子(酒呑童子のような体・ほぼ不死身。怪力)・見殺し入道・百々目鬼・滝夜叉姫以下鬼の郎党、武闘派妖怪等、力と打算に満ちたグループであるが、こちらサイドでもリーダー酒呑童子を巡る絡新婦VS百々目鬼の血みどろの嫉妬絡みの恋の鞘当があると感じられた。(登場する総てのキャラクターに独自で深い意味を示唆している点も自分がこの脚本を高く評価する所以である。

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    2019/11/03 13:11

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  • 皆さま
    追記遅くなりましたが、してあります。
    ご笑覧下さい。
                 ハンダラ 拝

    2019/11/04 12:34

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