この道はいつか来た道 公演情報 舞台芸術学院「この道はいつか来た道」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    鑑賞日2019/10/13 (日) 15:00

    これはひとつのラブ・ストーリーではないか。
    優しく切なくて、焦がれるような、諦めきった、奇妙な愛の物語。
    平岩紙さんのやわらかな声が、儚い夢と現実の間を行き来する。
    金内喜久雄さんはかき混ぜながら、それをゆったり包み込んでいる。
    ラブ・ストーリーは、リアルな現実を突きつけて突然終わりを告げる。

    ネタバレBOX

    舞台中央に電信柱、足元には汚れた青いポリバケツ。
    「この道は いつか来た道・・・♪」という歌声が聴こえて来る。
    登場した女はポリバケツに場所を譲ってもらって、そこへ段ボールを敷く。
    続いて登場する男と一緒にお茶の時間を過ごすうちに
    男は「結婚しよう」と言い出す・・・。

    やがて2人がホームレスであること、
    実は旧知の仲であること、
    7年前にホスピスから逃げ出してきたこと・・・が判明する。

    この“偶然知り合ってお茶を飲むうちに結婚を申し込まれる”という
    ストーリーを、2人はもう何度も繰り返している。
    恋愛において最もエキサイティング且つロマンチックな最初の1日。
    幸福と可能性に溢れていたあの1日を、リピートし続ける。

    ホスピスで死を待つより、「いつか来た道」を何度も辿るという選択。
    父も母も、ホスピスで先に逝った夫も通った道を、自分も通るのだという諦念。
    そこにあるのは「死に方」にこだわった結果「生き方」にこだわる姿だ。
    ホスピスで得られるはずの“穏やかな死”を手放し、
    ホームレスになってまで手にしたかったもの、
    それこそがたぶん彼らの生きる意味だ。

    彼女の浮世離れした上品で丁寧な物言いの反面、決定権を握っているらしい頑固さ。
    それを全て受け容れて、彼女の望みを叶えてやろうとする男の包容力。
    それぞれのキャラにぴったりはまった二人の役者さんが素晴らしい。
    だから、ラストシーンが一層満ち足りたものに見えるのだろう。





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    2019/10/15 03:32

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