天狗ON THE RADIO 公演情報 ものづくり計画「天狗ON THE RADIO」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     兎に角、脚本が良い。演出、演技、舞台美術、使われる曲と物語のマッチングも素晴らしい。(華5つ☆)

    ネタバレBOX


     舞台は地方FM局収録スタジオ。下手に金魚鉢のブース。上面硝子張りの衝立を挟んだ上手側がスタッフルーム。衝立奥にはドアがあり、金魚鉢と繋がっている。無論、on airのシグナルの設置されている。明転前の暁闇では、見切れが起こるかと心配したが、衝立上面が硝子で透けて見えるので観劇には一切問題無かった。
     物語は、過疎化などが災いして四半世紀続いてきた地元FM局が閉局を迎える直前を描く。平成で終了との決定をディレクターの強い意から令和の連休明け迄延ばし、一旦閉局はするものの、必ずや再起するとの決意を胸に、リストラや番組編成の変更・縮小、人気パーソナリティー登用などで延命を図ってきた局経営も最早限界とはいえ、次への一手を打つことで散り際の一花咲かせたい。そんなスタッフの意が、閉局に臨んで尚奮闘へと駆り立てる。伝説のパーソナリティーとして一世を風靡したミスター、東京で自分の番組を持つこの地出身の花形キャスター・ナギサの出演、現在最も人気のあるパーソナリティー・ベンジャミンとの新旧対決公開生放送等々、困難だが様々な企画を盛り込み計画はスタートするが、無論、世の中そうそう上手く行くハズが無い。スタッフらの意とは裏腹に計画が頓挫しそうな状況が目白押しである。
     而も内部事情としては、最も大きなスポンサー・賀間の意向を無視することが出来ないのは当然のこととして町内政治(町長一家は現在汚職疑惑・息子の小学生カツアゲ疑惑に絡む)VS町会議員や新進キャスターの町長選狙いの思惑、目玉の一つ、新興宗教教祖と化したミスターの扱い、ナギサの時間調整の難しさ、スポンサーCMに対する妨害等問題は山ほど出てくるばかりでなく、現在最も人気のあるベンジャミンは顔出しNG。公開リハでは聴取者から仮面を取れの大合唱。
     然し、これら総ての困難を救ったのは、かつてこの地で起こった大災害で局が果たした大きな役割と人々の心を支えた放送内容の歴史であった。リスナーから未来への手紙を託され、託した人の要望した時期に開封して読み上げる企画によってかつての記憶と現在とが生々しく接続される。その白眉は、災害時、両親を失くした10歳の少女、ナギサの両親からの手紙であった。親子3人でFM局の放送に出ることができたことの喜び、リクエストされた局が終わることになった時開封して読まれることを願ったことの意味と感慨等が綴られた内容は、胸を掻き毟るほどに痛切である。
     自分は、阪神淡路大震災の時、海外で暮らしていたのだが、仲の良かったドイツ人の友人から、生まれ故郷の神戸が大変なことになっているとの報せを受け、通じるハズの無い国際電話を掛けまくったことを思い出しながら拝見していた。
     By the way,唯一気になったのが、on airのランプが終止点きっぱなしだったこと。
     

    0

    2019/05/04 10:38

    1

    2

このページのQRコードです。

拡大