チョコレートケイキ 公演情報 春匠「チョコレートケイキ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     物凄く表現することに圧を掛け、凝縮した舞台。関わっている方々の地力が凄い。但し観ている側もずっと緊張しっぱなしだぞ! その意味でこれくらいの尺が丁度良い。

    ネタバレBOX

     舞台は可也暗めのオープニングで、奥も手前もハッキリ見えない程だ。人の腰ほどの高さ迄奥は嵩上げされているようだ。停電という設定も考えられはする。つまりラスト部分の伏線だ。ところで、嵩上げされた奥中央には監獄があり、拘禁衣を着せられた囚人は、更に念入りに口に管を咥えさせられた状態のまま口周りをテーピングされているのは、自殺防止という設定だろう。この有様だけで凶悪犯であること、囚人に観察できる身体的ダメージをなるべく与えず而も法的手順を遵守しているという法執行側のアリバイ創りと一応はその公式発表に逆らわない「リアリティー」の描き方が見える。
    手前下手側壁は、更に下手へ延びる踊り場になっており、正面壁の下手コーナー前には、囚人監視用のモニターが載った机と監視者の座る椅子、ちょっと離れた中程に会議用テーブル程のテーブルが設えられ看守らの用いる囚人監視ノート、事務帳等がテーブル奥にキチンと整理されている他、椅子が人数分ある。このテーブルの更に上手の正面壁には看守の帽子が掛けられるようにフックが4つ付いており、その更に上手に留置場へ続く踊り場への階段がある。出捌けは上手袖及び、板客席側の下手。場転で留置場が取り去られると間仕切りになっていた部分が絞首台下部に変じ、最深部の絞首台へ上がる階段へ続く階段も設置される。舞台美術の大枠はこんな感じだ。
     ところで、科白は殆ど無い。僅かにラストで(恐らく数百字程度がある程度明瞭に)語られる他は、ひそひそ声で若干囁かれるだけなので殆どの客には聞こえない。その分、通常の科白劇より遥かに難易度が高い舞台である。実際、上演時間一杯に緊張感を持続し得た各俳優の演技力、想像力と表現力の高さは褒めても褒め過ぎということにはなるまい。ユニークな作りという点でも、役者陣の力量という点でも、また演出の素晴らしさでも高い評価が与えられるべき作品である。ただ、作り方が知的である分、没入は出来なかった。知的な遊びは存分にできるが。一例を挙げておくと、先読みを極力させぬ作りになっているということだ。基本的にまあまあ、深読みできる観客が現在を過不足なく追えるということになろうか。全体として、これだけ濃密な舞台を作り上げた作家、演出家、役者、照明や音響スタッフ、何れの力も並大抵ではない。

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    2019/04/15 02:23

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