満足度★★★★★
つか作品の中でも最も人気の高い作品と言って過言ではないであろう今作だが、口立てを作品創造・制作の基本としたつか こうへいは、ずっと上演台本を活字化せずに舞台を創っていたから、熱海にも多くのヴァージョンがあることは、つかファンなら誰でもご存じのことだろうが、つかさんご存命の折、自分は彼の作品を生で観ていない。人づてに井上 ひさしさんを批判したと聞いて、気に食わない奴と勝手に決め込んで観なかったのである。その批判がどのようなシチュエイションで行われ、どんな前後関係に於ける発言乃至は文章なのかも全く知らずに愚かな判断をしたものである。無論、未だに井上ひさしさんの作品群は好きだし、亡くなってから本格的に観たり読んだりするようになったつかさんの作品も好きになったのだが、モンテカルロヴァージョンを拝見したのは、今回が初めてである。熱海だけで10回程は拝見しているのだが、このヴァージョンに一番、つか こうへいの地の部分が滲み出ているように思う。彼は在日コリアンであったから、日本でも、半島に渡っても基本的には被差別者であった。現在でも半島情勢は休戦のままであり、核戦略体制を構築することによってしかアメリカが交渉のテーブルにつかないどころか完全に無視される歴史を歩んで来たのが北であってみれば、アメリカの侵略と人種差別による虐殺正当化の歴史を嫌というほど見せつけられている我々有色人種の国家がアメリカを警戒するのは当然のことと謂わねばならない。まして、北は38度線を挟んで休戦以来66年以上も対峙し続けているのである。朝鮮戦争前夜、済州島で起きた4.3事件を上げるまでもあるまい。朝鮮戦争での中国義勇兵、北朝鮮軍・民間人の死者数は、太平洋戦争で死んだ日本の軍人・民間人の数を凌いでいる。而も分断されたのは、敗戦国日本ではなしに戦勝国側の朝鮮民族であった。無論、日本分断計画が無かった訳ではない。日本が分断されなかったのは、偶々国際政治が日本分断の方向に動かなかったからに過ぎない。
この作品を上演する際に最も大切なテンションの高さが途切れることなく続き、篤い念が伝わってきた。噛んだメンバーも居たが、ご愛嬌、threequarterを卒業するメンバーも居るのでご祝儀5つ☆ 更なる追記は後程。追記1回目2019.4.7
2019/04/07 11:00
追記1回目しておきました。
ハンダラ 拝