満足度★★★
この芝居のことは扇田昭彦『日本の現代演劇』(岩波新書)で知った。その絶賛ぶりで一度見たかったのが今回実現した。ただ、感想は「?」という感じ。セリフのない沈黙劇から意味を汲み取るのは難しい。そもそも言葉にできるならセリフにしたほうがいいわけで、ここでは言葉以前のなにかを感じるべきなのだろう。
舞台中央に壊れた蛇口があって、水が細く垂れ続けている。右奥から一人、あるいは二人と俳優が現れては、水を飲み、そこで何事かを演じて、また去っていく。その繰り返し。
人は来りて人は去る、それが輪廻のように続いていく、生命の無限の繰り返しを描いたともいえる。100人の観客がいたら100通りの解釈があっていい。
群衆たちのけんか騒ぎでは、一発の銃声(舞台ではびんた)で平和は破れる、平和のもろさを思った。しかし人間の戦争も、終わってしまえば一陣の嵐に過ぎない。「国破れて山河あり」「夏草や兵どもが夢のあと」である。
ぼろ服の疲れ切った男女が、服を脱ぎ棄てて沐浴し合う。そして憎しみも愛もそれまでになく高まって、半裸で絡み合う。この場面が一番印象的だった。水が与える生命力、あるいは浄化を感じた。
観終わった直後は、もういいと思ったが、こうして考えているとまた観たくなる。不思議な舞台である。