クラカチット 公演情報 東京演劇アンサンブル「クラカチット」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     この味わいのある小屋も締められてしまうという。惜しい、寂しい。休憩を15分挟むが3時間15分超の長尺。

    ネタバレBOX


     現在であれば、キチンと数式化して証明することは出来なかろうが多少生意気な小学生でも知っているあらゆる物質は、エネルギーの塊である、という恒星の原理、即ち核物理学の原理を察したチャペックの科学的センスの鋭さ、良さには唯驚嘆するばかりであったが、これを表す式E=mc²は、拝見しながら常に頭の中にあって舞台上に設えられた円周を光がぐるぐる回る様も、原子核の周りを周回する電子と見て楽しんだ。尤も、原子番号1の水素原子の核が野球のボール程度だとすると周囲を回る電子は、関東一円を包摂するくらいの所を回っている計算になるハズだが。
     とても乱暴な言い方だが原爆の原理は、現在人間が持つ技術で核爆発を起こすことの可能な核物質の構成を保たせている所迄濃縮・圧縮を掛け、極めて短時間に本来の物質エネルギーを解放させる為の連鎖反応を起こさせるショックを与えるだけの話なので、被ばくを防ぐ設備とラボ、分裂しやすい濃度迄濃縮した臨界量の核物質と核物理の知識さえあれば、かなり容易に作れる。
     無論、当初、知的興味から始まった核に関する知も、その被害が実体化され放射性核種や重金属汚染による悪影響が顕在化すると、ヒトのみならず、地球上に存在する総ての動植物、菌類やバクテリア、ウィルスなどまで含めて悪影響を考慮せねばならぬのは、食物連鎖の最上位にあり、且つ核技術を開発し、解決する可能性を持つ唯一の生き物として人間が在る以上、その責任も総てヒトが負わねばならぬのは必然である。
     無論、今作には実に多くの要素が含まれており、上に縣ことだけが今作の内容では無い。為政者が公人として生きる時、その社会的責任の重大さの為に、例えば己の恋心も抑制しなければならないことがあり、恋と社会的責任の狭間で引き裂かれる痛烈な哀しみ、切なさも描かれるし、そのような中での逢瀬では、一介の男と女として愛を成就し繋ぎ止めようとする足掻きも描かれる。俗世のシガラミとして権力最上位にあることで、不自由やいらぬ警備・警護を受ける不自由、地位故の悪辣や企み、驕慢とそれらを諌めるかのような神的啓示或いは象徴等も用いられる壮大な作品であり、矢張りキリスト教世界の価値観を纏った作品でもある。
     東洋の国、日本に生まれながら、東洋的な価値観や習俗より欧米的な生活様式を取り入れている現代日本に暮らす者として、様々に彩られた己の存在全体を振り返ってみるのに、適した作品と言えようか。

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    2019/03/27 15:49

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  •  示唆に富む興味深い公演でした。
                 ハンダラ 拝

    2019/03/27 15:51

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