見よ、飛行機の高く飛べるを 公演情報 ことのはbox「見よ、飛行機の高く飛べるを」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    初演(旗揚げ)、再演(シアターグリーン2018 BOX in BOX Theater賞受賞)、そして今回が再々演となる。それぞれ違う劇場で上演しているため、その構造に応じて演出も変わる。その意味では同じ脚本でも違った印象を受けることになる。
    さて、この公演の時代設定は明治44年であり、今から100年以上も前の状況でありながら、いまだ色褪せないテーマを描いている。
    説明にある通り、名古屋の第二女子師範学校の女性徒がある事件をキッカケに当時の女子教育の在り方、学校校則による閉塞感に抗い戦いを挑むが…。
    (上演時間2時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、基本的に同じで中央にこの宿舎とは別棟の扉・通路、その横は2階への半折返し階段、上手に舎監教員室や給湯室への出入口、下手は談話室があり、ここが芝居の中心になる場所である。また、衣装や髪型は、当時を思わせる雰囲気を作り出している。既に知っているセットであるが、やはり場内に入ると一瞬のうちに日常から非日常の世界へ誘われる。
    さて、この劇場は横に広がり、初演・再演に比べ足早または大股に歩くことになる。それは女生徒の溌剌・活発とした動作として観ることもできるが、一方中盤(バードウィメン発行準備)以降の会話劇の緊密さという全体の流れと少し違う。

    脚本が同じでも演出やキャストが違うと物語の印象が違い、新たな楽しみがある。今回は、それぞれ女生徒の出身(士族の出か否か)や立場の違いにより性格が明確に表現されていた。特に杉坂初江(小野寺ずるサン)は始めこそ上級生に向かって礼儀正しかったが、編集長になってからは胸を張り、いや少し反りかえるような鷹揚な態度に変貌する。その演技が印象的で、思わず立場が人(人格)を形成する典型的な過程を観(魅)せたようだ。

    一方、台詞と照明は劇場の広スペースの影響であろうか、解り難いところがある。まず台詞は俚言で早口は聞き取りにくい。場面の流れで何となく自分で推測し納得させているような。また夜の談話室での会合シーンは少し暗く、談話室の対角にある自分の席からは観難い。初演、再演時の劇場であれば観えた明るさでも、今回は細かい動作が分からないのが残念だった。それでもシーン毎の照明効果(特にスポットなど)は素晴らしく、表情の陰影が心情を物語るようだ。

    表層的には、当時の女子教育...良妻賢母・温順貞淑などの台詞等にあるとおり、女性の生き方や男女差別を容認するような教育方針の押し付け。それに抗う姿勢に対し国権(警察権力等)を利用してでも圧する体制の理不尽さ。この体制には屈しないが、人の心情に胸打たれ…。友情と愛情という”情”の間に揺れ悩む、もう1人の主人公・光島延ぶ(廣瀬響乃サン)。再演時と役柄が変わったが、抱擁力ある優等生というよりは芯の強いリーダーという印象で、違った魅力を観せてくれた。やはり良い脚本に演出の妙が加えられ、演技という役者の力によって具現化される、改めて「演劇」の素晴らしさを伝える。そういえば、「ことのはbox」は、ほとんど毎回劇場を変え、演出の試行錯誤を繰り返して脚本の魅力を引き出そうとしているような…。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2019/03/17 08:06

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