雲隠れシンフォニエッタ 公演情報 芸術集団れんこんきすた「雲隠れシンフォニエッタ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     桐組、藤組、恋組の3ヴァージョンがある。初日、桐組を拝見。(カメラを持って行くといい。階段途中に絵巻のように綺麗な作品が飾ってあって撮影OKだから)原作は千年以上前の作品だが全然古びていない。而も、今作は、結構現代風にアレンジしてあるから、古典に詳しい人にも、それほどではない人にも楽しめよう。舞台美術は可也気に入った。

    ネタバレBOX


     平安中期(文献初出1008年)に成立した「源氏物語」の翻案である。光 源氏は幼くして母・桐壷の更衣を亡くし、桐壷を偏愛した帝は為に桐壷帝と呼ばれるようになったほどであったが、失意の底にあった。そんな帝を見かねてお相手にと連れ添わされたのが、瓜二つと噂されていた藤壺である。藤壺は桐壷帝の中宮となった。源氏とは5つほど年の離れた女后であったが、桐壷帝の息子・源氏と通じ冷泉帝をもうけることも原作には描かれている。
     今作、様々な場面で源氏物語に出てくる有名なシーンがベースになっている。「雨夜の品定め」や「源 典侍との色談義等」から類推できるのは538年に渡来した仏教の影響を受けていることだ。例えば藤壺、桐壷帝、源氏の間に成立している関係を宿痾ととるより矢張り業として取りたい、という解釈の差でもある。さすればこそ、桐壷、藤壺、紫の上と一直線上に並ぶ光 源氏と女性達との縦の糸、横の糸は、様々な遷移を伴いながら六条御息所、妻・葵上、朝顔、空蝉、朧月夜、花散里、明石、玉蔓とプラトニックから、下級貴族の娘として生まれながら父の方針もあってその才知に磨きをかけ源氏を救った運命の女人、生霊譚を含む凄まじい嫉妬まで、源氏の心に巣食った魂の罅、即ち底なしの穴と、その地獄に惹かれる女性たちの優しさ、柔らかさ、母性といったものの哀れと同時に炎に飛び込む美しい蛾のように恋に命を賭ける女性を取り出した。因みに、今作では、桐壷には一切触れていない。それは、男にとっての母なるものへの念は、恋愛を前提とした男女関係とは次元の異なるものだからである。一時、この国で門題になった母子相姦問題はまた別建てで論じなければならない。
     尚、源氏臨終の際、舞われる舞の雅樂の大本は青海波である。源氏物語を読んでいる人なら気付いたであろう、それをダンサーでもある源氏役の中川 朝子さんが踊っている点、基本はヨーロッパのダンスであるから和洋折衷という形式になっているので楽曲も途中から変じる訳だ。更に、その生涯の最後に葵の上との約束で源氏が述べた科白に「来世があったなら」の一言が在る事は、源氏の孤立を表わすと同時に作家の仏教的輪廻に対する認識を示して意味深長である。
     また、頭中将の指摘、源氏の心に蟠る罅の指摘と決して権力に無欲では無いという指摘は極めて重要である。何故なら、頭中将こそ、源氏の鏡像だからだ。源氏物語の凄さは、このように男と女の関係を恋愛という籠に入れて編んだこと、その切なさと地獄と、地獄から仰ぎ見る夢の儚さを基調として。この本質を作家がキチンと理解した上で翻案していることがグー、役者陣個々の役作りに関しては、頭中将を演じた黒崎 翔晴氏の時代物出演への経験値が、日本的外連味を出しているように思った。
     舞台美術も中々雰囲気が出ていて良いが、更に上を目指すには、個々の役が、役者各々の身体を通して滲みだすような演技を心掛けて欲しい。

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    2019/03/07 13:03

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  •  自分以外にアップする人が居ないようなので、少しだけ付け足しました。
                                 ハンダラ 

    2019/03/10 03:19

    舌足らずですが、アップしておきました。
                 ハンダラ 拝

    2019/03/07 13:07

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