平成31年東京の旅 公演情報 劇団星乃企画「平成31年東京の旅」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

      Fを拝見。拝見した7本中、唯一の非ストレートプレイ。

    ネタバレBOX

    作家が何故このような作品を書くのか? 自分には分かるような気がする。どんなに良く構成され、計算が緻密であっても短期間に同一の作家が書き得る作品の幅には限界がある。キチンとした表現をしてきたればこそ、読者・観客に見切られ、飽きられる事に対する危機感は深刻である。
     そこで、今作は様々な破壊、脱構築に挑んでいるのだ。従って今作の中で歌舞伎が取り上げられるのは、必然である。何となれば歌舞伎は、能など既に評価が定まっていた伝統的な古典に対する脱構築として生じたムーブメントだと考え得るからである。
     現代のように激しく時代が変化する際には、表現する者総てが己の存在基盤を根底から疑い、解体した上で再構築するラディカリズムが求められるのは、表現上の必然である。少なくとも真の表現者は必ずこの問題と格闘せざるを得ない。この格闘を通してのみ、新たな意味を自由という普遍的価値に付与し、作家は真に創造者となるのだ。
     当然のこと乍ら、新たな地平を開く際、それまでの伝統が完全であればあるほど、地平が堅固であればあるほど、深く疑い、穿つべきは穿って砕き、以て再構成せねばならない。その際、時折クソッタレ! 的な表現と見える形式、表現類型が出てくることは大いにあり得る。然し、根底が違ってしまっている以上、既にそれを伝統的価値基準に従って判断する術は無い。
     以上のような問題を提起している点で、今作は頗る面白いのだ。

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    2019/03/04 14:40

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