平成31年東京の旅 公演情報 劇団星乃企画「平成31年東京の旅」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    Aを拝見。(華4つ☆)

    ネタバレBOX

    1:5万円台の賃貸物件を探している若者に不動産屋はからかうように高い物件ばかりを紹介。終に切れかかった若者が大声を出すと漸く該当するような物件を紹介し始めたが、最後に言い出したのが所謂曰くつき物件。4万円台の物件であった。無論、出たのだ。然しながら借主のお蔭で今は既に成仏したとのこと。伏線として渋谷の映画館に1度幽霊が出た話が挿入されたりするのだが、これが、オチに繋がる。
     さて、幽霊が出た件の物件の顛末は以下の通り。引っ掛けがあって最初、話の流れで霊は女性、除霊に成功したのは男性と思い込まされるのだが、ここでも反転が為される。その後、2人が実は知り合いであったこと、女性は彼が毎週月曜に少年ジャンプと珈琲牛乳を買いに立ち寄るコンビニの店員で何となく話をするようになっていた。だが彼が亡くなった当日、彼女はコーヒー牛乳にストローをつけ忘れた。彼の死因は台所でひっくり返って頭を打ち、それで亡くなったのだが、彼女の解釈によると彼は少年ジャンプを読み終えることが出来ず、それが残留思念となって幽霊になったというのである。何故台所でひっくり返ったのかといえば、ストローが無かったのでコップを取りに行ったのだが、何らかの原因で転倒、頭を強く打ったという解釈であった。約1週間彼らは夜毎対話を交わした。そして彼女は件のジャンプと珈琲牛乳にストローをつけて霊の前に持参、彼はジャンプをいつものように珈琲牛乳をストローで飲み成仏できたということだ。ところで、成仏する前に彼が彼女の趣味である映画鑑賞は何処でするのかを訊ねており、渋谷との答えを得ていて、1度だけ会いに行ってもいい? と尋ねたのであった。唯一の瑕疵は、1週間、彼が読み損ねたのが、亡くなった日発売の号だとすると実際1週間後の次の号を持参したのか、それともちゃんと読み損ねた号を持参したのかがハッキリしない点。
     2:女を矢鱈取り換えていた男が病死した。早い時は僅か2時間で別れるという記録の話も出てくるほどだが、それで付き合ったと言えるのかどうかとの疑念が湧く程の乱脈ぶりだった。が、1人だけ1年間も続き而も実家に連れて来た彼女が居た。その彼女と妹が偶々路上で出会い、久しぶりだからと彼の実家に寄って思い出話をするという設定。彼女から見た彼は、樹木のような存在で、何かよくは分からないが触れてはいけない何かを魂の奥底に秘めているような。だがそんな彼が何時の頃からか優しくなった。荷物をそれとなく持ってくれるようになったり。だが、彼女にとって、そのような教科書的優しさは本当の優しさとは感じられない。そこで、妹にお兄さんはいつ頃病気を知ったの? と尋ねている。このように繊細而もユニークな視座で男にとっては謎である女性心理を描く細やかさは、Bの1話に出てくるにゃこのサクラの詠む歌やDにも良く現れているこの作家の詩的感性を更に強く印象付ける。作家は、劇詩人と定義して良かろう。今後の雄飛に期待している。

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    2019/03/04 11:09

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