TOCTOC あなたと少しだけ違う癖 公演情報 株式会社NLT「TOCTOC あなたと少しだけ違う癖」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     フランスの戯曲なので論理で追っていきさえすればオチは容易く分かろう。

    ネタバレBOX

    ところで我々の周りにも潔癖症や追跡症、離人症などの強迫神経症を抱える人間はいくらでもいるが、普段余り気に掛からないのは、彼らが己の症状を隠していたり程度が軽かったりするだけの話だろう。今作に登場する6人は偶々症状が重いという共通項を持つに過ぎない。だが、本人たちにとって問題が深刻なのは無論その症状によって差別されたり、からかわれて人間の尊厳を傷つけられるからである。恐らく総ての精神疾患の根底にあるのは、この問題であろう。
     今作は喜劇という体裁を採ることで、このような人間の性を批評しているのだ。無論、観る側もそれが分かっているから己自身を省み自己批判的に笑うことでカタルシスを得ているのである。
     そしてこのような戯曲が成立することで、フランスという社会のシステマティズムを表象しているのである。このようなタイプの作品は、日本では生まれ難いだろうが、その理由は明らかだろう。鵺のような社会で、個々人のアイデンティティーが、明確化されることを恐れ、嫌う余り、自らの頭で考え、論理的に出た結論を肯んじることを拒み、無化しようとするからである。こんなことだから何時までも日本社会は成熟しない。文政権下の裁判所判断に此処までヒステリックな罵声を浴びせるのはこのせいだろう。話が逸れた。
     舞台美術はスタイリッシュでセンスの良さを感じさせるものだが、できれば1カ所だけ傷が欲しかった。美しい傷の無い落ち葉より、文化的レベルとしては病葉を選ぶ方が文化的洗練は高いと信じるからである。また、その方が、本当は作品の本質にもマッチしよう。演技にもそれが言えると思う。ルー氏の演技は品良く見せ過ぎな感があった。演技で本当に気に入ったのは、ヴァンサンを演じた近童 弐吉さんとリリィを演じた井上 薫さん、このお二人は今作の本質を的確に捉えた演技だと評価したい。演出に関しては以上から類推して欲しい。

    0

    2019/03/03 11:44

    0

    1

このページのQRコードです。

拡大