明日ー1945年8月8日・長崎ー(2018年@シアターKASSAI ) 公演情報 演劇企画イロトリドリノハナ「明日ー1945年8月8日・長崎ー(2018年@シアターKASSAI )」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     タイトルから直ぐに原爆の話だと気付くが、一体我々は原爆の恐ろしさについてどれほどの想像力を持ち得るだろう? 今作のファーストシーンは、核炸裂の瞬間ではない。

    ネタバレBOX

    日本によって戦後、勲一等旭日章を授与されたアメリカの将、カーチス・ルメイ旗下の米空軍による佐世保への焼夷弾攻撃である。日本全国に焼夷弾の弾雨を降らせた張本人だ。彼のやり方は、先ず逃げ場を塞ぐ。東京大空襲を例にとると、進入路の海側を除く3方の各辺を火の海にして一般市民の逃げ場を断ち、その上で絨毯爆撃をするというもので、僅か数時間で十万名以上の女、子供、老人が亡くなった。カーチスらは攻撃前「日本の家は竹と紙でできている、良く燃える」と笑っていたとの話は人口に膾炙していたから聞いたことがあるかも知れない。何れにせよ、当時の国際法でも一般市民への無差別空爆は国際法違反であった。それは、日本が重慶に対して行った空爆も同様である。国際関係論の中で、以上の事実を挙げただけで何とかの一つ覚えを繰り返す御仁も居るが、そんなことはおいて、今作は、もっと肝心なことを描いている。それは、殺される側の生活である。フィクションという形ではあるが、史実をキチンと踏まえ庶民の日常を丁寧に描いている点、対比する戦争を情報とヒロイン・ヤエの姉、ツル子のB29恐怖症として表している点が秀逸である。8月8日から、原爆投下の瞬間迄の26時間の要所、要所を時刻表示で表し、不可逆的な時間の齎す不可避性を最も効果的に表現した演出も、役者達全員の、役を生きる一見控え目だがタメの効いたしっかりした演技も良い。原作は知らなかったのだが、原作も是非読みたくなる出来である。上手奥に掛かる掛け軸や有田焼の壺なども、この一家の社会的位置と気位を偲ばせる。同時にあの時代のヤエの婚礼に出席する者達の中に、紋付袴や和服を着ている者が登場したり、お頭付の鯛が登場したりするのを近隣の者達が涎を垂らさんばかり食い入るように見つめているさまを表している点、矢張り近隣の者が、物資横流しの罪を被った親戚の者の娘を恫喝して石鹸を奪い取ってゆく様を描く辺りのリアリティーが、戦争の最も本質的核心である情報戦と経済力・政治力などの下支えとして機能していることも見逃せない。
     更に、戦争で傷ついた者が持つデカダンスとニヒリズム、苦悩の帰結としてのさつきと石原の関わりも、単なるサイドストーリーに終わらぬ深い考察を促す点がグー。

    5

    2018/09/23 09:23

    2

    1

  • みかんさんへ
    ブログもご覧下さったのですね。
    有難うございます。今後少しずつ
    充実させてゆくつもりですので、時々
    お立ち寄りください。
    ではまた。
                 ハンダラ 拝

    2018/09/30 18:11

    ハンダラ様、ありがとうございます!
    ブログ読ませていただきました。
    こちらこそ、今後共よろしくお願い申し上げます。
    どうもありがとうございました🙇‍♀️

    2018/09/29 10:51

    みかんさんへ
     実は、自分も今、核絡みの作品を書いています。自分のものは、原発を扱っていますが本質は一切変わりません。F1人災以降、殊に核の問題は己の問題意識の中核を占め、この間少しだけ本の整理をしていたら、核関係だけで60冊以上になっていました。未だ未整理の分があるので恐らく80~90冊に膨れ上がるだろうと思います。この他、大江の作品、エッセイの核関連を入れると更に若干増えそうです。こんなに持っているという意識は無かったのですが、我ながら1つのテーマで此処まで多くの書籍を持っているのには、驚きました。他にはパレスチナ問題が同程度、次いで沖縄問題が数十冊程度でしょうか。文学関係の本はたくさんあるのですが。
     何れにせよ、みかんさんの作品は、心にも魂にも染み入る深く味わいのある作品でした。拝見できて嬉しく思っています。今後ともよろしくお付き合い下さい。あ、それとブログを新たに始めていますので、よろしければ遊びにいらして下さいね。今、ちょっと立て込んでいるので、昔書いたものを転載しているのですが、今作も何れブログに掲載させて頂こうと考えています。URLはこちらですhttps://handara.hatenablog.com/では、また。因みにスコット・リッターの記事は、イラク戦争に反対する為に、2003年に人民新聞という新聞に書いた記事のほぼ全文です。ご笑覧ください。
                              ハンダラ 拝

    2018/09/28 20:59

    ハンダラ様、本当にありがとうございます!
    この芝居の持つ計算されつくした一個一個のピースを、しっかりとらえてくださったこと、感謝の気持ちでいっぱいです。
    私たちが事実として知っている空襲、それ一つをとっても、殺される側一人一人の人生がここにある。
    たとえ助かっても、ツル子のように、PTSDに悩まされるものもいる。
    8月8日・長崎というあの場に、実際観客が行って、庶民の生活をのぞいてみているような、そんなリアリティが欲しいと思いました。
    それがリアルであればこそ、翌日に待つ冷酷な運命が胸に迫ってくる。
    調度品や小道具にもこだわりました。
    高砂の掛け軸は、昭和初期のものを探して揃え、床の間の壺は、有田の老舗、深川製磁製の本物を、オークションで買い求めました。
    鯛も料理も、本物を用意しました。
    器もこだわって、古伊万里や有田の逸品をそろえています。

    また、石原のセリフに関しては、かなりの量の文献を調べ、できる限り説得力を持つものにしようと考えました。
    彼によって、被害者であったはずの日本人が、実は加害者になる可能性もあったということが暴露されます。
    その彼もまた…というどんでん返し!
    お客様がリアルな世界に浸りつつ、いつしか冒険譚のような世界にのみこまれてしまう…といった、ハラハラドキドキの展開を心がけました。
    お客様に喜んでいただけたら、とてもうれしいです!
    これからも精進してまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。

    2018/09/28 05:36

    みかんさんへ
    とても良い作品に仕上がっていますね。今迄みかんさんが一所懸命世界と向き合おうとしてきた成果だと思います。質の高い作品を有難うございました。出演の皆さん、スタッフの方々にもよろしくお伝えください。
                                    ハンダラ 拝

    2018/09/23 09:28

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