変奏・バベットの晩餐会 公演情報 かもねぎショット「変奏・バベットの晩餐会」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     上手、下手奥側面に階段が設えられている他は基本的にフラット。必要に応じて、ベンチ、テーブル、机、箱馬などが出演者によってセットされる。(華4つ☆)

    ネタバレBOX

     一応19世紀中ごろの北欧の架空の町が舞台となっているが、通貨がクローネであるからデンマーク、ノルウェイなどかつてバイキングとして覇を競った国々をイメージしながら拝見した。時代的にはナポレオン3世辺りか、フランス革命以降の動乱を経験している話が出てくるので、自分はそう考えた。バベットは、このジェズィット派流の極めてストイックな宗教的権威に支配される町の司祭の家に亡命して来たフランス人女性だが、彼女の自由な振る舞いが如何にもフランス人らしいのに比して、この町出身ではあるが、ロンドンやパリでよそ者として暮らすオリーヴィアの人工的な自由発現とは異なる点、またオリーヴィアのそのぎこちなくわざとらしい自由表現が、町を引っ掻き回す狂言役を担って、バベットの自由と対比されると共に、この町の地域住民との関係で自然な振る舞いをするバベットの方が、この町出身で異質性を自ら演じているオリーヴィアより親しく受け入れられていることが興味深い。この違いが、バベットがパリで多くの家に石油を撒いて放火したという噂が町中に知れ渡っているにも拘わらすなのであるから、猶更である。
     一方、演出で少し気になった点を上げておくと、オープニングで役者が登場する際、暗転から明転に至るのではなく、登場人物の8割程度が舞台上に現れる時、やや昏いものの観客に動きがハッキリ分かる状態で登場するので、下手、上手に整列する動きが丸見え。実際に演技が開始される整列直後の、バベット以外は恰もゼンマイ仕掛けの人形の歩みのようなすり足、小刻みな歩行とバベットのダンスのような自由な動きの対比が減殺されていること。
     物語自体は極めて面白く、ユーモアに富み衣装もフランス映画の傑作「天井桟敷の人々」でジャン・ルイ・バローが纏っていたような白いパンタロンに襟に特徴のあるもの、バベットは、若干異なり上着は白衣風。何れにせよ基本は白なので宗教的な清廉を表している点でも評価できる。タイトルの晩餐会は、無論「最後の晩餐」を意識していることが明らかである。というのも今は亡き先代の司祭が水上を歩いて渡った話が出て来たりするから、これはキリストがガリラヤ湖の水面上を歩いた話と呼応しているのが明らかだからだ。ラストの見事なパフォーマンスもこれらキリスト教の奇蹟譚と呼応しているのは明らかだ。
     ところで、今作5評価に出来なかった理由が、オープニングの問題と影の主役とも言えるオリーヴィア役の女優が、芝居をナメテイルンジャないかと思えるほど噛んだこと。また、自分の席ではないが、指定席なのにWブッキングしているなど制作何やってんだ! と思う点があったことによる。演劇は裏方を含めた総ての関係者によって作り出される総合芸術である。無論、その中に観客も含まれる訳だが、Wブッキングの憂き目に遭った観客の態度は紳士的であったから合格。以上挙げた点に今後留意して舞台を作って頂きたい。演劇大好き人間からのお願いである。こういった点にも注意を払えないようでは、一所懸命舞台づくりをしている役者、他のスタッフが気の毒である。

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    2018/09/08 12:29

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