満足度★★★★
当日は、台風12号が西日本に上陸し、東日本でも大雨が予想される天気。
場所は、初めての代々木能舞台。15:30の回に向かう頃は、まだ小雨模様だった。
能舞台の下手には、渡り廊下とその前には、中庭がある。
舞台の進行に合わせて、雨は強まり、最後にはかなりの強雨となっていく。
雨は音と視界で舞台を席巻し、役者も観客も飲み込む勢いだ。
月船さんが抑揚を抑えたセリフ回しに、雨音が内面の高揚感を煽り立てる。
稀有な体験。人為を介さない舞台装置の偶発なる演出。
綾田さん、石見さんの存在が朧な陰影で覆いつくされ、月船さんの独白調の想いが、
雨音にきれいに沁み込んでいく。
よいものを観たな。
なんなら、あの猛暑日の日差しが差し込む日の舞台も観てみたかった。
その対比は、一生ものの舞台体験になったかもしれない。