散ッと舌を突く凍えそうな毒夢 公演情報 劇弾☆ムーチョ・モーヂョ「散ッと舌を突く凍えそうな毒夢」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     かなりアイロニカルな作品だ。

    ネタバレBOX

    初めから最後まで最も冷静に事態の成り行きを見つめ続けているのは、檻の中で暮らすクズ子だし、クズ子がクズであるのは、無能の為ではないことは明らかである。彼女がクズとして己を認識し、且つ最底辺から世の中を見ているのは単に彼女が国家という近代以降の幻想にケツを捲り反逆しているからに過ぎない。一方、エリートとされる者らは、国家幻想に踊らされている事にも気付かぬ愚物である。先ずはこの前提から入らないとおかしな話になってしまうであろう。
     物語が展開するのは、かつて刑務所だった建物を現医院長が改装させ、今では精神病院として用いている建物の中である。この建物は現在ドドイツ軍とカルタ軍の戦闘が行われている最前線に位置しているので、年中、銃砲撃や戦闘機・爆撃機の飛翔音、爆弾の炸裂する音等が聞こえてくる。
     近代戦であるから、戦争の大義が問われる。戦争の発端にもこの論理は当然働くが、人口に膾炙しているのとは異なる事実がこの戦争にはあった模様だ。今作は、この事件を巡る因縁話でもあるが、無論総ての戦争に通じる部分も多い。各キャラクターの名は、その役割を象徴するものが多いのも今作の特徴だ。クズ子以外で冷静な視点を保っているのが、シンクである。彼女は、この戦争の真の発端となったと言われる大虐殺の唯一の生き残りとして描かれる。
     物語は、ドドイツ国の捕虜が、収容施設不足でこの精神病院に収容されたことから、急展開し、有為転変があるのだが、要は、戦争を遂行する軍人の論理と。感受性が鋭かったり精神の受忍限度を超えるような体験をして通常の精神の働きを逸してしまった者達の論理との対決である。どちらの論理が正しいとされるかは観てのお楽しみだが、精神病院から解放された後、将軍となったレッドが休戦協定を結んだにも拘わらず、1年後には、戦争遂行勢力の力が強まり、結局、レッドは、また病院に戻ってくるというラストに集約されている。このラストでどちらが正解かは、お分かりだろう。そしてヒトという生き物の愚かさも。

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    2018/07/27 13:43

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