九月、東京の路上で 公演情報 燐光群「九月、東京の路上で」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     1923年9月1日11時58分、関東大震災が日本を襲った。

    ネタバレBOX

    その日は風が強く、而も昼食の準備などで火を用いていた家庭も多かった為、地震による災害のみならず、燃え広がる大火災によって被害が拡大したことは知られる通りである。この震災及び大火災のパニックの中で、デマが飛び交い、軍、警察までがこれを信じ行動を起こすと共に後ポダムの暗号名を持ちCIAエージェントとして暗躍した正力松太郎(当時は内務官僚、特高などを動かした)らが出した指令により、多くの朝鮮人、中国人らが虐殺の憂き目を見た。(後日、これが過ちだと気付いた正力は、訂正した指令を出すが、既に広まったデマの猛威を払拭することは適わず虐殺は震災後数日に亘って実行された、この混乱に乗じて労働運動に関わった者らも政治的に殺害されている)殺害に加わった者達に軍人、警察官らが居たことは無論であるが、組織された自警団のメンバーら一般市民も数多く関与していた。この事実を揉み消そうとする輩は、今も大勢存在するし、当時から、事実を矮小化し、抹消、改竄、隠蔽しようという動きはあった。
     今作は、加藤 直樹氏の原作を手に、虐殺事件があった場所を訪ない、現在と往時とを繋ぎ掘り下げ連結する試みである。日本という「国」が、近代以降歩んできた道の検証作業であると同時に、日本及び日本人が持つ傾向についての、虐殺された方々への追悼の行脚を通しての掘り起し作業でもある。今作によって明らかにされる日本及び日本人の持つ傾向は、当に現在我々が日々経験しつつあることに他ならないという事実が、ひしひしと迫ってくる作品であるが、でああるが故に、この手の作品を避ける傾向が見受けられるのも事実である。戦前を生きた方々の多くが、かつて歩いた道と現代がそっくりだとの警告を何度も発している通りなのだということを実感させてくれる必見の作品である。このような作品を、今、この国で上演するこの劇団の勇気と真摯な姿勢を改めて称賛したい。

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    2018/07/25 16:21

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