被差別民は当に時代の大衆の鏡であるから、それも単に硝子の裏に金属(錫や銀)を張って作る底の浅い鏡ではなく、水鏡のように底に不可視の闇や、地獄を抱える鏡である点で、物語の深みを増し、ありきたりの勧善懲悪や陳腐な正義のヒーローものに落ちていない点が良い。 新選組の描き方も、沖田がえらく残虐だったり、時代の読めないと考えられがちな新選組局長、近藤勇が、時代を秤に掛けていたりと、少しは知的な狡さを持つ大将として描かれている点も興味深い。それに引き替え、実際五稜郭で果てた土方歳三の一貫性を純情、剛毅、明快な人物として描いている点も頗る興味深い。酒呑童子の子という設定の半兵衛に美形の女優を充てその悲劇を美的に昇華しているキャスティング、演出もグー。殺陣も格好良かった。 エンタメとして楽しめると同時に差別を巡るこちらの人と彼の地の者との対比で観ると頗る興味深い観方ができる。それは、ゴダールの「Here and There」にも通じる視点となり得よう。