フランケンシュタインー現代のプロメテウス 公演情報 演劇企画集団THE・ガジラ「フランケンシュタインー現代のプロメテウス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「人間とは」、それを問うような無限に広がる心の世界観を描く秀作。可視化が難しい、いや出来ない人の心の中を家族や周りの人間関係を通して覗き込むような不思議な感覚。物語は不穏・不安にさせるような雰囲気の中で重厚に展開していく。
    ある心理学者は、人は一般的に快を求め不快を避けると思っていたが、それだけではなく不快極まりないと分かっていても、敢えて向かう執拗な傾向が人間にはある”という。自分は不快は好まないが、本公演は別の”深い”を堪能した。
    (上演時間2時間15分)

    ネタバレBOX

    客席はL字型ひな壇で舞台を半囲い。舞台は1798年の北極圏を目指す船内。古いテーブルと古机その上には地球儀が置かれ、壁際には姿見がある。全体的には薄暗く不穏な感じがする。物語は重層化された劇中劇、語りは日記を回想するような展開で、いつの間にか観客(自分)を物語に導き溶け込ませる導入手法は見事であった。

    梗概…北極探検隊の隊長・ウォルトンの日記(手記)という形式。ウォルトンは北極点に向かう途中、北極海で衰弱した男性を助ける。彼の名はフランケンシュタインでウォルトンに自らの体験を語り始める。フランケンシュタインは大学の専攻とは別に生命を自在に操ろうという野心の下、”理想の人間”を創ろうとする。それが神に背く行為であると自覚しつつも墓を暴き人間の死体を手に入れ怪物の創造した。しかし創造主たる人間に絶望した怪物は、復讐のためフランケンシュタインの家族等を次々に殺害するが…。そして長い話を語り終えたフランケンシュタインは、ある願いをウォルトンに託し船上で息を引き取る。
    ちなみに作者は男装した女性、その性にどう向き合い正直な気持になるのか。現代的にも通じ気になる。

    一見、難解で抑圧されたような雰囲気は不快のように思えるが、自分は別の”深い”というか可視化が難しい心の中を覗き込んでみたいという衝動に駆られた。重層した物語の不思議な時空間、そこに在るであろう幻影をどう炙り出すのか。精緻にして魅力的な台詞や幻想的な舞台空間の作りに感心した。
    例えば、神を認めないことは不完全な人間、自分の存在-自分を知る者がいなくなった時に、自分をどう証明するのか、という心の咆哮が聞こえるようだ。また夜中の語りという状況下、隠微な雰囲気を漂わせる。その中で蝋燭の火-ランタンは幻想的であり、実に上手い心象形成であった。照明は群衆と個人または対話時における照射を使い分けるなど印象的な観せ方は巧み。闇と寂寥そして残酷な感触をしっかり描く。

    公演タイトルは「フランケンシュタイン-現代のプロメテウス」で、人間を創造したという共通点を並列している。その創造の動機や過程が違うことは、現代におけるITに向かう姿勢そのものに投影し警鐘を鳴らしているようだ。
    時空間を行ったり来たりさせながら、主人公はフランケンシュタインなのか怪物なのか。つまりどちらの視点から捉えた”心”の中、深淵なのだろうか。自分が観えたのは狂気のような…。それを演じた役者の体現こそが驚喜であった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2018/06/08 21:38

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