iaku演劇作品集 公演情報 iaku「iaku演劇作品集」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    『梨の礫の梨』を久しぶりに観た。一回だけだけど。

    東京の観客からすると評判の悪いかもしれない激しいノリツッコミ的な会話のラリーだけど自分は大好き(笑

    ・・これ、ケンカなんとちゃう?

    いや、愛情表現なんですよ。今はなきベトナムからの笑い声でその表現に触れてから、すっかりその虜になってしまったのだけど、これは、普段は黙々と仕事をしている女性の話なんだ。

    ネタバレBOX

    登場人物は二人だけど、5人いると考えた方が良い。

    子どものときの母とハタチの母、死んだ27、8の母。もう35過ぎの娘と、7歳の娘。

    死を考える人にこつんと投げかけられる小石になりたくて、でもなれなかった、振り向かせられなかった、7歳、たぶん人間の一番かわいかった時期にかかる容姿の時に母を亡くした、娘。

    反抗期を母親にぶつけられなかった女の子は10年物の中途半端(自分は好きだけど)なマッカランをちびちび飲んで、つぶれ、ながら。昔母に連れてこられた酒場で母の亡霊に怒りをぶつける。

    この声、本当に出ていたの?

    自分は目の前のマスターには聞こえていたんじゃないかと思う。

    とするともう一人の登場人物はマスター。

    怒りを妄想の亡霊にぶつけるんだけど、その母親の優しさは誰のもの?

    劇作家は男で、そう考えると、叫ぶ女性の声を黙って見守るマスターと、それまで支えてくれた風変わりな男たちの優しさなのでもあるのではないのかなぁとも思う。

    とすると登場人物は一気に9人位に膨らむ。

    舞台を観ながらカウントしてみた。少し笑えた。
    この世にもう存在しなかったとしても、人の優しさは消えはしない。
    優しさが胸に焼き付けられたその人がこの世から焼尽するまで。

    激しいケンカみたいな言葉の応酬の中から紡ぎだされる見守る優しさ。ぼんやりとした、自分とマスター以外のだと7人ばかりの、もうこの世にはない残像を、瞼の下に、追いかけながら。

    自分のとても好きな大阪らしい(笑

    10年物のマッカランがあと10年で渋く甘く濁るまで、あとどのくらいホテルの部屋を掃除するのだろう。無言で。

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    2018/05/28 01:50

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