キャガプシー 公演情報 おぼんろ「キャガプシー」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     粗筋については、劇団の説明にもあるから割愛する。

    ネタバレBOX

    極めて切ない物語であるのは、登場人物たちの命名を見ても分かる通りだ。自分は、パレスチナの現状に思いを馳せながら観ていた。実際、パレスチナへ出掛けると障碍者の多いことに驚かされる。無論、ナクバ前から既に70年を超えるシオニストらのパレスチナ人に対する苛烈極まる虐殺の歴史の中で生き残ってきた人々の肉体に刻まれた痛々しい傷である。ホロコーストこそ、実行していないものの、その差別、弾圧の苛烈及び抑圧を旨とする占領政策は、ナチがユダヤ人に対して行った政策と変わらないことは、ホロコーストサバイバーの子供(サラ・ロイ)たちの証言などにも明らかである。
     大方の見方と異なり、つまり自分は現実の隠喩としてこの作品を見た、ということになるだろう。例えば不自然な表現が一か所、ツミがネズミに実父を殺害されたシーンの解釈である。ツミの父を殺害した直後家に戻って来たツミをネズミは切りつけ最初に両目の視力を奪うのだが、その後恰も勘違いをしたかのようにツミが、自分を襲った暴漢を追い払い助けてくれたのがネズミだと信じて、その後ネズミの齎した企画、キャガプシーショウに協力し続けることになる場面である。合理的に考えるなら力が男性より弱い女性が、己の命を守る本能レベルで咄嗟にこの嘘を自分にも信じ込ませたという風に考えなければちょっと納得できない。
     何れによ、エリザベス朝の演劇よろしく、白昼のテント公演は、太陽光の下での演劇公演としてシェイクスピアの作品を当時の人々が観たような環境で観るという極めて面白い試みでもあった。実際、物語の展開には、シェイクスピア的な要素がふんだんに入っている。どこがどのようにシェイクスピア的であり、ギリシャ悲劇にも通じるような普遍的な部分であるのかは、観て確認してほしい。
      ところで、シャイクスピア自身は作品で問題提起はしているが、回答は出していない。一方、今作は、ラスト間際で、回答のヒントを与えている。それは、矛盾率を如何に解決するか? に対するヒントであり、人は、夢見なければ生きられないという切実な“命”、生きるという命題に対するとても大切なヒントである。

    0

    2018/05/18 12:27

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大