ダム・ウェイター 公演情報 Prayers Studio「ダム・ウェイター」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     劇団名はPlayers StudioではなくPrayers Studioである。然し宗教的な組織が背景にあるとか、関係しているということでは無論ない。(華4つ☆)

    ネタバレBOX

    主宰の渡部氏がロシアのレオニード・アニシモフ氏に師事し氏主宰のレパートリー・シアターで体験した謂わば根源的な演劇体験が、人が真摯に祈る時の態度・心象に近いのではないか、と感じる故である。
     今回ベン、ガスを演じた2人の俳優、小八重 智さん(ベン役)、北口 哲也さん(ガス役)にしても真摯な演技には好感を持った。
     作品はピンターの「ダムウェイター」大分前に三茶のシアタートラムでも上演されたことのある作品だが、大方の方が述べるのとは、少し異なる視点から、観てみよう。
     それは、この二人に決定的な情報が最後まで与えられない、ということの意味についてである。観客である我々は、現在、膨大な量の情報の洪水に毎日、毎時、毎分、毎秒襲われ続け溺れている。然しこれらの情報の如何ほどが、自分が現場でリアルタイムに、見聴きしたことだろうか? 伝言ゲームというゲームがある。この結果は、ご存じであろう。我らの日常に、確たる情報など自らの直接体験し得るもの以外、実は殆ど無いのであり「~だそうだ」という話でしかないことは、かつて吉本 隆明が指摘した通りである。ありていに言えば、今作が我々の実存に直接訴えていることとは、実は本当に大切な情報が、実は所、他のどうでも良い(自分の実存にとって)情報の氾濫に隠されてしまって見えていない怖さなのではないか? ダムウェイターが降りてくる度、与えられるメニューが隠喩に満ちていることは、実に示唆的ではないか? 而も、隠喩を読み取れない者にとって、それは、馬鹿げた文言や謎に過ぎないのであれば、そこには、ピンターからのもう一つのメッセージ、メディアリテラシーへの誘いが含まれているとも言えよう。

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    2018/04/29 12:17

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