ヴィテブスクの空飛ぶ恋人たち 公演情報 劇団印象-indian elephant-「ヴィテブスクの空飛ぶ恋人たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     ダニエル・ジェイミソンという人の原作を演出家の鈴木 アツト氏が訳している。生のヴァイオリンが入っていて、イディッシュ語を話すことの多かったアシュケナジーユダヤの生活の匂いが感じられるような気がする。
    (ところで、照明ランプにも絵が描いてある。お魚の絵で、シャガール作品に現れる絵のお魚に似ているように見受けた。粋な演出ではないか)(華4つ☆)

    ネタバレBOX

    水晶の夜迄は、ホロコーストに直結するような行動を矢張りヨーロッパ人も中々起こせなかったとは言えまいか。無論、「屋根の上のヴァイオリン弾き」が、ポグロムに追われたユダヤ人の物語であり、ロシアでは、このポグロムによってかなりの数のユダヤ人が殺害されていた。その為もあってか、現在、イスラエルで最右派を形成する勢力、リクードのイデオロギーのベースはロシア出身のシオニストの論理がベースになっているという事実は、日本人以外ならかなり多くの人々に知られている。この論理が、現在、ホロコーストこそやっていないものの、ナチよりも悪辣なやり方をするに至っているイスラエルによるパレスチナ人ジェノサイドに利用されているのである。
    だが、かつてユダヤ人殊にアシュケナジーユダヤには、極めて優れた表現者、学者、思想家らが輩出した。何故か? 彼らは各々が、語るべき多くのことを持ち、主張しなければならない正当性と論拠を持っていたからであり、これらを抱え込まざるを得ない故なき被差別が、彼らをして人類全体を底上げする為の人生を選ばせたからである。フランツ・カフカが存命中、プラハに居たユダヤ人は3万人ほど、そのうち14人だったか15人だったかハッキリ思い出せないが、このどちらかの人数のユダヤ人がノーベル賞を受賞している。それほど、彼らの知的レベルと人類への奉仕の姿勢は高かったのである。現在、パレスチナ人が、かつてヨーロッパで迫害されていたユダヤ人と極めて似た状況に置かれている。そして、パレスチナ人一人、一人は、多くの語るべき物語を持ち、世界中に散らばったパレスチナ人は、表現者、学者、思想家として素晴らしい活躍をしている。このような差別状況を作り出している人々がシオニストであることはもっと糾弾されてよい。(断っておくが、自分はユダヤ人批判をしているのではない。あくまでシオニストを批判しているのである)
     今作を観るに当たって、観客は“ミルクの夜”を過ごしたシャガール夫妻の恋による魔法を見ることになる。シャガールの絵の解釈については、今作とはかなり異なる解釈に立つものも実はある。だが、それはしばらく経ってから明かすとしよう。取り敢えずは、恋の魔法に掛かった彼らという設定を通して観てみたいと思わせるだけの作品であったのだから。

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    2018/04/23 01:51

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  •  シャガールの絵の別解釈については、後述します。
    アツトさんの内省には、少しお応えしておきました。

    2018/04/23 02:05

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