詩×劇2018 つぶやきと叫び―礫による礫ふたたび― 公演情報 遊戯空間「詩×劇2018 つぶやきと叫び―礫による礫ふたたび―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     空気が怖い! (第1回追記2018.3.23 04:04分)(尚今レビューには、一部、和合氏の作品からの引用があるが、原詩を確認している訳ではないので、表記に異同が在るかも知れない。また、音声から聞き取った作品をベースに自分がアレンジした文章も混じっている。どこが、どう違うかは、舞台を観て確かめて欲しい)
     (第2回追記2018.3月24日01時半 二回目追記)

    ネタバレBOX

     福島は3月にも雪が降る、ぼた雪だ。その雪は汚染されて、今、車の窓から入ってくる。手に落ちた、溶けた。汚染された水になった。その水を何処に捨てたらいい? 雨が降る、雨が降る。この雨は、既に汚染されている。地震、津波で街が、人が、無くなった! 見付かっていない方も多い。而も、彼らを探そうとする場所も、斑に汚染されている。ガイガーカウンターは、一番肝心な時に手元に殆ど無かった。情報を求める声に正確な対応も殆ど無かった。その中で人々は、右往左往せざるを得ず、詩人は、多様で楽しく、而も豊かな言葉を失くした。唯、発狂しない為、彼は同じ表現を反復せざるを得なかった。あれほど多様で自由な、而も羽を生やしたような言葉を縦横無尽に駆使していた彼の表現が、同じフレーズの反復になった!! このことの意味する所をこの腐れ切った「国」で圧殺されようとしている人々の魂を代弁する詩人の声を今こそ聞け! 
     今作は、福島の詩人・和合 亮一氏の「詩の礫」「詩ノ黙礼」「詩の礫 起承転転」の言葉を遊戯空間の篠本 賢一氏が、再構成し役者の身体に落とし込む作業と言えよう。西洋流に言えばロゴスの身体化をその演出、衣装を含めた美術、そしてダンサーの動きとピアノ、チェロの生演奏そしてスクリーンに映し出される映像やメッセージ、説明を加えて立体化した作品である。従って当然のこと乍ら衣装は、黒子の着衣のような、無駄をそぎ落としたものである。
     3.11の地震・津波後、メルトダウンした福島第一原発群による放射性核種汚染という三重苦に見舞われた上に東電及び政府の手際の悪さや必要な緊急情報の不適格な配信などによって被害は広まり、人々の権威や権力、企業、メディアに対する信頼はどんどんなくなっていった。その上、心配することはありません、と呼びかける原子力マフィアのプロパガンダが、チェルノブイリ同様行われた。当時首相であった菅直人氏は、東工大の応用物理出身であるから原発事故の行く末を正確に理解していた。即ちメルトダウン或いはメルトスルーの危険性をいち早く察知していたと考えてよかろう。そこで当事者の東電に再三報告や対策について問い掛けたが、肝心の東電最高幹部は、非常時であるにも関わらず己が責任の重大性に気付かなかったか或いは責任逃れの為にその頭脳と神経をすり減らしていたのであろう。碌な対応を採らなかった。ハッキリ言って、事故を起こした原発の格納容器内に燃料が収まっている内に冷却しなければ大事故になることは物理的必然である。(この程度のことは素人であると自認する読者も自分で調べて頂きたい。)どういうことになるか分かっていたのは、東電幹部で名の知られる人の中では、吉田部長くらいであろう。彼と現場スタッフは実際、命懸けで冷却対応に従事した。然しながら被災者の方々には正確な情報が齎されず、そのような場合に真の専門家が起こり得るリスクをキチンと伝える努力もしなかった。斑目が出鱈目と仇名されたことを覚えておいでの方々も多かろう。
     ところで人災が起こったのは確かに民主党の政権下であったが、原発をずっと推進し続け、安全神話を作っては垂れ流し、地方財政の収支の厳しさに付け込んで補助金を出し続けて地域の分断を図り、結果地域全体を原発から離れられないように仕向けた張本人は自民党である。原発人災後、推進派は、数の論理に頼り、人権無視、憲法や国民の権利を無視することを繰り返してきている。おまけに第2次安倍内閣以降顕著だったのは、国民生活に重大な影響を与えるような案件については、先ず安倍が海外へ出向き、勝手に様々なことを取り決め、日本に戻ってそれを強行採決するというやり方である。国会での論議を蔑にし続ける政権の性質の悪さに不信感を募らせる暇すらなかった人々に対してのケアも不十分極まりなかったことが、増々状況を悪化させた。而も、当時東電社長であった清水は、人災発生で大混乱を極める現場から逃げ出そうとしていた。その彼も、後、ジャーナリストから問い詰められた際、人災であることを認めている。(参考までにこの事実が記されている本の名を挙げておく。(岩波ブックレットNo.893 福島を生きる人びとp.18上段)このことだけを見ても東電の最上層部の倫理的腐敗は悍ましい以外の何物でもない)
     政府は、スピーディのデータもアメリカ軍には直ぐ流しておきながら、被災地の日本人には一切流さなかった。そして「直ちには、影響がない」と繰り返すばかりだった。ただちには影響がないということは、和合氏も指摘しているように、後々には影響が出るということである。
     日本という「国」は棄民政策以外の政策を持てないようである。幕藩体制を嫌って、明治に入って以降も、海外移住や満蒙開拓団は当に棄民政策であった訳だし、戦中及び敗戦後沖縄の犠牲の上に成り立ってきたヤマトは、F1人災では、福島を切り捨てた。何という下司ばかりが上に立つのか!? 
     このようにして人々の間に醸成されたのが不信感と、其処から来る底知れぬ不安である。人々は自ら立ち上がらざるを得ない。例え、それが狂わない為だけの雄叫びという形であっても。
      民主党は野田になってから、ハッキリどう言い逃れをしても認められないような体たらくであったが、無論、背景にアメリカの圧力があったことは明白である。鳩山下ろし、管バッシングの背景に控えていたのは、アメリカである。そしてアメリカのケツを嘗めて喜んでいる日本の下司官僚共だ。マスゴミがこれに追随した。結果、被災者は日本中からバッシングされつつ、分断された。更に故郷から放射性核種が原因で追放されたのだ。逆に人災を起こした東電は、我々に課された税金を使って救われた。
     然し東電が負うべき責任から可能な限り逃げ続けている事情は、現在に至る迄一切変わっていない。その中で、被災者たちが詰め腹を切らされ続けている。こんな情勢の中で自民党政府の言う“安全神話”を誰が信じられようか? この5年間政界を恣に牛耳っている者こそ、自民党の中でも最も悪辣な安倍 晋三という大嘘吐きの愚か者であるという批判にも耳目を傾け、被災者の実情に耳目を傾けて欲しいものである。
    核は制御できない。この単純極まる事実を皆が認識することが、この地球という命の星に生きる生き物全体を護ることに繋がるのだ。
     

    5

    2018/03/22 02:31

    2

    0

  • 篠本さま
     自分のレビューが、観客動員に少しはお役に立てたか否か
    分かりませんが、今表現する者が向き合わなければならない最も
    根本的な問題を深く本質的な視座で捉えた優れた舞台であったことは、
    ご覧になった方々には伝わったと思います。
                               ハンダラ

    2018/03/26 09:22

    ご指摘の、そのような状況の中で何が叫びとなるか、そんな舞台でした。

    2018/03/26 06:23

     お疲れ様でした。
    第2回追記しておきました。
          ハンダラ 

    2018/03/25 01:41

     第1回追記をしておきました。
              ハンダラ 

    2018/03/23 04:09

     追記形式にしました。多分この方が、こりっち読者の目に触れる機会が多くなると思います。では、また。
                                   ハンダラ 拝

    2018/03/22 03:47

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