地上10センチ 公演情報 ガレキの太鼓「地上10センチ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    テンポ良く、ダレることなく見せてくれるのだが、ゴールまでが一直線すぎたような印象。
    「頭上10センチ」ぐらいのところを行ってほしかったような……。

    ネタバレBOX

    余命宣告を受けた男が、直前に参列した葬式から「(あのような葬式ではなく)感動できるような葬式をあげたい」と思い、妻や友人、兄弟を巻き込み、新しい葬式の形を模索していくという話。

    なかなか思うようないい案が出ず、苦労しながら葬式のリハーサルまでもっていこうとする主人公たちの悩める姿に、この話の行く先が見えてきたように思えた。
    「いろいろ考えても実際は……」という結論だ。

    そこへどう向かうのかと思ったのだが、本人や妻がいろいろイメージを出しても現実的な限界やアイデアの不足でなかなかいい企画にはなっていかない。

    もし実際に「自分らしい葬式を」と考えたとしても、いままでの葬式の概念や家族、親戚、友人たちの考えや想いから、それほど奇抜なものはできないだろう(劇中でも葬儀社の人が葬儀内で行われることの意味を示していたりしていた)。
    その意味で、リアルな反応が舞台の上にあったと思う。

    とは言え、これは演劇であるので面白さは必要だと思う。もちろん「面白おかしい」いう意味だけの面白さではなく、「考えさせてほしい」と思うのだ。
    それには何か少し足りないような気がする。

    つまり、ある一定の年齢になると、葬式に参加することも多くなり、「自分の葬式だったら…」と考えることもあるようになる。その「自分だったら」の範囲を超えない程度の内容がこの作品にあったと思うのだ。

    もちろんそれは「ピラミッドのような墓にしたい」とか「感動できるような」と言った本作品の主人公と同じ考えを持つということではなく、思考の過程みたいなものが想像の範囲内にあるという意味だ。それは「リアル」ではあるが、演劇の持つ「リアル(な面白さ)」とは違うのではないかと思うのだ。……うまく言えないけど。

    葬式を、人の死を、扱うことで、作者自身にリミッターがかかってしまったのかもしれない。なのでどこかで少しだけそのリミッターを外してみてもよかったように思えるのだ。

    彼の考えている式が、冒頭の2つの式に酷似してくるなんてことがあったりもするので、あらゆる呪縛が彼らの「新しい葬式を阻む」というようなものとか……それは違うか…。

    とにかく、観客の想像の少し上を描いてほしかった。そう、「頭上10センチ」ぐらいのところを(笑)。

    到達する先が見えたからは、単に「見えている」ゴールを目指しているようにしか思えず、面白さはそれほどでもなかったのが残念だ。

    以前ガレキの太鼓は春風舎を教室にして観客を参加させたように、葬式に参加させてもよかったのではないか、なんてことも思った。

    少し面白いなと思ったのは、主人公の行動(葬式のリハーサル)に関して反対するのは男だけ(友人・兄弟だけ。葬儀社の人は別)というところだ。妻や主人公の友人の妻は積極的に参加していく。私が頭の中で同じことを考えたら、たぶん女性のほうが葬式のリハーサルを嫌がりそうに思えたから。

    ラストはなんか気に入らない。
    確かに「死」は無慈悲だし、(ほとんどの場合)予測は不可能だ。しかし妻の弟をストーリーのためだけに殺すことはなかったと思う。
    リハーサル中に死体役だった本人が息を引き取っていた、というほうが物語の行き着く先としては意味があったのではないかと思う(その「意味」とは私が勝手に考えたもので、作者の意図とは違うかもしれないのだが)。
    リハーサルをやってみたものの、実施内容は不完全でまだ決まっていない。さらに本人も迷ってしまっていた。そんな中で主人公の本当の葬式をどうあげたらいいのか、こんな中途半端な形でいいのか、のような葛藤やもやもやが者たちに降りかかってきたのではないか。

    主人公の妻を演じた村井まどかさんの、夫に対して冷めているはずなのに、彼のためになんとかしようともがいている姿が健気でもありよかった。
    主人公の友人の妻役の石川彰子さんの、積極的さにどこか面白がっているような感覚もよかった。

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    2018/03/14 07:02

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