『戦争戯曲集・三部作』 公演情報 劇場創造アカデミー「『戦争戯曲集・三部作』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     “大いなる平和”と題されていることから、陳腐な平和の毒についての記述かと思っていたら、トンデモナイ。(花5つ☆)

    ネタバレBOX

    第三部も緊張の連続であり、いい意味で裏切られた。
     客観的状況は一・二部と変わらない。何せ核戦争で地球上のありとあらゆる地域が汚染され、人々は被ばくの恐怖と寄り添う形で生きてゆくしかないのだ。動植物の殆どが死に絶えているから、食糧確保も並大抵の苦労でないのは、砂漠化したエリアでの生活が描かれるパートでは同様である。
     第1部では、組織を代表する軍隊の論理を貫徹する為に用いられる論理と組織維持を最優先することを前提とし得る状況の、前提条件が言外に描かれていた。同時に一旦始動した軍が、争闘の論理を、軍の規律を守るという規則の論理にすり替え、他の一切の論理の可能性と考えるという行為を圧殺する模様が描かれた。
    2部では核爆発の猛威によって、自らの生と死の判断を下すことすらできなくなった人々や、核爆発は生き延びコミューンさえ作って発見した缶詰を食糧に何の苦労もなく生きていた人々は、新たに生きている人間に接し、幸か不幸かコミュニティーメンバーが死んだことからパンデミックを疑い、境界領域で猜疑心を膨らませ、それによって自滅しかける様を悲喜劇として描くアイロニーパート。
     第3部は、漸く数々の試練を経た後にも生き残った人々相互は、互いに出会うことになったが、個々の自由とシガラミとの葛藤の中で結局何をどのように選ぶのか? という問題に関しては総てを統一的に捉えることのできる論理・実践を見つけ出すことができない、というこれまた皮肉な結末。
    だが、如何にも西洋の戯曲らしく、個々人の自由が最優先されてその意味で、救いが無い訳ではない所に救いを見出すことはできよう。何れにせよ、大変な傑作である。

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    2018/02/26 00:35

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