作品の内容を拝見してこの矛盾に合点がいった。実際、埴輪雄高ではないが”不合理故にわれ信ずという態度は、表現することを職業としない人々が犯すことの多いミスや、表現する者に於いても拘りが強すぎて本人が矛盾に気付かず表現してしまうこともあろうし、現実自体が矛盾に満ち満ちているから、それをそのまま形にしてしまうと、正確ゆえに矛盾するという事態が起こる。このように矛盾は、真を求める者にとっては題材の宝庫なのである。今作は、先ずこの点に着目して入っていることからして、力のある作品である。 初日が終わったばかりなので、サスペンスの内容について余り細かいことはここでは記さないが、二転三転どころではなく容疑が次々に湧き、その一々が追及される構造になっているので緊迫感が途切れず楽しめる。 尺も80分程度で良く纏まっている他、ラストに掛かる歌がSound of silenceでタイトルと呼応している点も洒落ている。