いずこをはかと 公演情報 PocketSheepS「いずこをはかと」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     先ず、タイトルから解説しておく方が親切だろう。劇中でも神父がキチンとした説明をしてくれるが、元々10世紀前半に書かれたといわれる「伊勢物語」の一節“いづかたに求め行かむと門に出でてと見かう見けれどいづこをはか(り)とも覚えざりければ”から採られている。古い本なので()で示したようにヴァリアントがある。句読点は当時用いられなかったから、そのままにしてある。脚本と演技は☆5つ、舞台美術にもう少し工夫が欲しい。花4つ☆(追記2018.2.14)

    ネタバレBOX

     閑話休題、内容の要約は、不如意な生まれと感じざるを得ない家に生まれてしまった令嬢・瑠璃は、中堅の武士であった先祖が何とか出世したいと望み、殿に宝物を献上したことが原因で、生涯座敷牢同然の部屋住みを強いられる宿命から自由を強く望む娘に育った。武士が入手した宝とは、金色に光る蛙であった。献上された殿はこの宝物をいたく気に入り、家宝として大切にするよう家臣に命じ、命を請けた家臣は、生きたまま蛙を桐箱に収め、宝物殿の奥にしまい込んでしまった。当然、金色に光輝く蛙は死に、齢三百歳を超え、妖術を用いるまでになったその母の大ガマガエルは、復讐の念に燃え、娘である金色の蛙を生け捕り出世の為に殿に献上することで命を奪うことになった令嬢の先祖に呪いを掛けた。もし、娘が外に出れば、この世で最も酷い呪いを彼女は周囲にふりまくことになる、という呪いであった。以降、この家の当主は長女を屋敷内に閉じ込め一生飼い殺しにするという家訓を守ってきた。この話が原点である。
     要は子は生まれる時代、家、両親を選べないという不如意を背負って誕生するという事実に迄敷衍できる。そして、幽閉が自由を命懸けで求める契機となることも。更にこの呪いをパンドラの函に掛けたことが、今作をより普遍的なものに繋げる縁となって居ることにも注意を向けたい。
     さて、この物語のもう一つの動力、それは互いに生まれて初の親友を持つに至った女掏り・珊瑚である。彼女は仲間2人と共に子供の頃、女掏りの親分・銀子に拾われ育てられた。つまり孤児と考えてよかろう。(捨て子かも知れないし、両親共に亡くなっているのかも知れない、その辺りはこちらで解釈する他ない。何れにせよ育ててくれる大人は居なかったから今流に言えばストリートチルドレンである)幸か不幸か、銀子は彼ら3人(珊瑚、鷹彦、虎次)を一人前の掏りに育て上げることで将来独立させる他、生きてゆく為の方法を教えることができなかったせいで厳しい管理体制を敷き、3人の自由を奪っていた。無論、上納金も含めてである。その所為で珊瑚も自由に対する強い憧れを持っていたのである。
     偶々、縄張りで荒稼ぎをし過ぎたせいで、取り締まりが厳しくなり上がりが乏しくなっていたこともあり、大店を襲って大金をせしめ、銀子に上納金を払って尚自分達3人が生きてゆけるだけの金を稼いで自由になろうと三人が衆議一決した時、忍び込んだのが、今では財閥となった瑠璃の実家であった。宝とは金銀財宝と思っていたのに、この家第一の宝とは瑠璃であった。その財宝自身が「自分を奪ってくれ」と言い出したからたまらない。自由を望む強い気持ちで相通じた二人は、座敷を飛び出し、冒険の旅に出るが、既に年頃となっていた瑠璃には父が決めた婚約者が在り、倒産寸前の会社を助ける為の政略結婚をさせられることになる彼は、瑠璃の夫になることでこの家の資産総てを乗っ取ろうと企んでいたのである。彼は、無論この計画を最後の最後まで明かさないので、この話に纏わる展開も一波乱あって実に面白いのだ。瑠璃の父も単に家を護る為の鉄面皮ではなく、実に人間味のある男であることもキチンと描き込まれている。
     一方、舞台美術には、もう少し工夫が欲しかった。脚本、演技は高いレベルであったが、舞台美術及び舞台監督、演出には、もう少し物語と美術の相関を詰めて欲しかった。教会は祭壇を設けてもっと小さいスペースで済ますとか、下手奥に2階を設けそこを掏りたちの溜まり場にするとか、費用的にきつければ幕や布で書割を工夫するとか。そうすれば、観客はもっと自由に想像力の翼を広げられるように思う。脚本と演技が良いだけに、この点は残念であった。

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    2018/02/10 10:16

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  •  脚本、演技ホントに気に入った舞台です。これからもどんどん良い作品を創って下さい。またお会いする時を楽しみにしています。
                    ハンダラ 拝

    2018/02/14 13:34

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