おたまじゃくし【15日より大阪公演開幕、チケット好評発売中!】 公演情報 劇団鹿殺し「おたまじゃくし【15日より大阪公演開幕、チケット好評発売中!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     自分は子供好きなので、

    ネタバレBOX

    こんな状況で子供を持とうと思わないが、未だに大多数の人々は愛する人との間に子供を作りたいと望む。それが素直に望めれば自分もそちらを選ぶ。然しながら我々の暮らす現代は、ヒトのみならずありとあらゆるこの星に生きるものが滅んでもおかしくない状況である。第1に核だ。第2にAIとナノテクを組み合わせた新兵器、その他にも環境破壊やヒトの欲望の作り出した不自然な環境負荷が今後の生物の存在に与える悪影響等々をあげつらえば枚挙に暇がない。
     だが、今作の登場人物の中に現代に自分のようなディストピアを見る者は皆無であるから、精子無力症の主人公も、子の出来ない原因を打ち明けられたことも無い妻も多くの人々同様子の誕生を望んでいる。内容は、観て貰いたい。但し始まり方は、この評のように、ちょっと常識から外れた視座を用い、ショックを見る者に与えて後、引き込んでゆくという方法を用いている。
     ところで、気になった点はタイムパラドクスの処理についてである。男3代に跨るこの話の中に祖父、父、孫が出てくるのであるが、孫が父に会う時、祖父に連れられた幼い父と同時に存在しているというドッペルゲンガーを更に複雑にしたようなシーンがあったりするのだが、この問題をキチンと処理していない点である。孫が時間を遡り過去を再編した点については、父の死の代わりに母が大怪我を負うという形でタイムパラドクスの処理が為されているので、作家にこの知識が無かった訳ではないのが分かるだけに、最初に挙げた点が未処理である点については、不満が残った。
     面白いのは、舞台奥に向けて7~8°程度の登坂傾斜を持たせた平台の上に文化住宅の間取りが示されている点だ。これが固定された唯一の舞台美術であり、他は必要に応じて半透明な箱馬が多用される。文化住宅の名は、2種類あるが、ここでのそれは大阪で1950~60年代に建築され、それまでの銭湯使用・共用トイレ・共用炊事場などでは無く、各戸にそれらが設えられ核家族化がモダンの象徴として喧伝されたことに拠る。無論、背景にあったのは、同じ敗戦国イタリアなどの人民を慮る配慮がこの植民地官僚には最初から無かった点にある。この辺りの本質が、現在も変わらないのは、政治と官僚の結託を見れば明らかであろう。何れにせよ、民衆はまんまと官僚の仕掛けた罠に嵌ったということである。
     今作、元々TV用に作られた脚本ということであるから、余り厳しく追及するのも大人げないかも知れぬが奇を衒い過ぎて哲学的な深みや科学的整合性に欠ける点は、更に勉強して欲しい。

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    2018/02/03 15:49

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