オホヒルメ 公演情報 アブラクサス 「オホヒルメ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     738年女性として初めて立太子した後749年孝謙天皇として即位し、一旦は上皇に退きながら重祚し再度称徳天皇として返り咲いた聖武天皇と藤原光明氏の娘・阿倍内親王を中心に、物語は展開する。
    背景には645年に大化の改新で功を遂げ死後天智天皇から藤原姓を受けることになった鎌足の子孫で紫微中台長官及び太政大臣を兼任した仲麻呂、同じく新勢力として躍進していた藤原四兄弟の子で従兄弟に当たる永手と共に律令制を取り入れようと画策していた。即ちこれまで朝廷を支えてきた旧貴族勢力、長屋王や橘諸兄・奈良麻呂らとは対立関係にあったのだ。
    なお、この物語の半世紀ほど前には壬申の乱、更に10年程前には白村江の戦いがあり、大和は、大敗を喫していた。しかも壬申の乱では、天智天皇の子・大友皇子が叔父である大海人皇子に敗れ大化の改新以来天智天皇の重臣となっていた貴族達も散り散りになっていたため、天武天皇は皇族中心の中央集権政治を実現することができるようになっていた。
     今作は、このような経緯があって後、疲弊した大和で仏教を重んじた聖武天皇及びその子、阿部内親王(718年生まれ。後の孝謙、重祚して称徳)は、728年に生まれた弟、基の死を受けて女性初の立太子として立った後、749年に即位したのだ。(追記2018.2.3)

    ネタバレBOX

     先にも述べた通り天武以降天皇の権威が増し神の憑代としてその権威は高まりを見せていた。このことが、今作の改革派中心人物である藤原仲麻呂の権力の背後で権威として機能している聖武天皇の皇后であった藤原光明子(今作では多くのシーンで皇太后)の権威の源泉、力の源泉であることは言うまでもあるまい。光明子を演じた女優に品があることもキャスティングの良さを示している。長屋王の変、についての解釈、内親王の生涯についての通常とは反対の立場に立つ解釈(道鏡及び彼との関係に関しての解釈についても)自分にはとても納得のゆく解釈であり、今作の解釈が正しいのではないかと思う。何となれば歴史などというものは所詮勝者が己の為した悪逆非道、人倫無視の政策を隠蔽する為のものでしかないのは、事実を発掘し続ける者達の努力によって綴られる歴史とは大方対極を為すからであり、政治という人民操縦の具だからである。
     以上の事実から、今作の眼目は、現安倍政権に対するアイロニカルな批判ともとれる。実際、現政権の無定見、無思慮、無責任、そして反人民性、反人間尊厳性は明々白々である。この事実を、実際に現天皇及び天皇の家族が、政治的立場を明確に示せない現行法の中で示し得る最高の方法でアピールしているのを見ても、そして本音では、これら良心の鏡とも言える天皇家の国民的人気が、自民党の議員にとって頭の痛いことであるのも事実であろう。だが、自分は天皇制には反対である。天皇、皇族に対する現在の日本の総ての人民が、彼らを特別視することが逆差別に当たると考えるからである。ヨーロッパの国々にも王や王族を抱えたまま民主主義国家である国々は多いが、王、王族も人間として民と同じである。(無論、キリスト教という一神教の国々が多いことと無関係ではないが)
    ヨーロッパに比して若干難しい問題はあるにせよ、人間及び人間性をベースにしたシステムの中で、天皇や皇族に人として当然の権利を与えるのは、主権者、国民の義務でもあろう。そのようなシステムを我々自身が用意しない限り、天皇制の問題は穏便に片付くまいしこの国特有のファシズム形態を乗り越えることもままなるまい。今作はこのような問題迄考えさせてくれる力を持っている。
    演技では、特に主役の羽杏が気に入った。

    4

    2018/02/02 17:54

    2

    0

  • ハンダラ様
    とても励みになるコメントありがとうございます。
    次回に向けて気持ち新たに頑張ります。
    ありがとうございました。

    2018/02/12 18:40

    羽杏さま
    コメント有難うございます。
    本当に深い作品で感銘を受けました。
    政治というものの、本質も実に良く
    描かれていたと思います。羽杏さんの
    演技の質も、キチンと内親王の生涯に
    ヴィジョンを以て臨んでいらっしゃいましたし。
    作品に対する深い理解もキチンと見えました。
    こちらこそ、今後ともよろしく
    お願いします。
              ハンダラ 拝

    2018/02/12 11:02

    ご来場頂きましてありがとうございました。
    今回は1300年以上前の時代でしたが、調べていけばいくほどに、今と通じていました。
    今回の作品は、リサーチだけで膨大な時間がかかり、まだまだもっと深めたいところが沢山ある程でした。


    書いて頂いたお話本当にありがたく受け止め今後に繋げていかせて頂きます。
    これからもアブラクサスをよろしくお願い致します。

    2018/02/11 13:06

     歴史的にも非常に面白い時代が取り上げられ、動乱の世の渦中にあって為政者がどのように在るべきか、その本質を衝いた意欲作ですね。現政権へのアイロニーとしても高く評価できます。楽日まで突っ走って下さい。

    2018/02/02 18:00

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