グランパと赤い塔 公演情報 青☆組「グランパと赤い塔」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    「人と人とのつながり」その本来の姿。

    青☆組を初めて観たのは、たぶん10年近く前になる。
    アトリエ春風舎での公演『雨と猫といくつかの嘘』だ。
    そのときに「上品だ」と感じて、そう感想にも書いたと思う。

    そして、その「品の良さ」は今もずっと続いている。
    こんなに品の良い作品を生み出している劇団は、ありそうでない。

    さらに最近はそれに「風格」も加わった。
    それはここまで続けてきたことの、自信なのかもしれない。

    (以下はネタバレboxへ)

    ネタバレBOX

    この作品は、登場人物が多いにもかかわらず、1人ひとりに愛情が込められているので、物語に深みがある。
    彼らの背景についていちいち細かく書き込まれていないのに、その背景が台詞の端々からうかがえるのだ。
    これが「品の良さ」の源泉であるし、「風格」にもつながっているのではないだろうか。

    今回は(も)、作の吉田小夏さん自身につながる家族の話がベースにある。
    「もはや戦後ではない」と言われた頃から東京タワーが完成する、昭和30年代前半が舞台である。
    1956年ごろから1958年ごろではなく、あくまでも「昭和」30年代前半なのだ。
    西暦ではなく元号「昭和」で切り取られるべき世界。

    青☆組は、『パール食堂のマリア』など、この作品と同時代を舞台にしたものはあるが、現代を舞台にした作品であっても、「平成」と言うよりは「昭和」の香りがする。
    それは古くさいということではなく、「人のつながり」においてスマホやパソコンで「つながっている」と「勘違い」している「平成」の世界ではなく、「人と人」が「顔を合わせ」ることで「つながっている」世界があった時代ということだ。
    その時代が「昭和」のイメージに重なり、確実に行われていたのが、高度成長期が始まる前あたりだった。
    戦争からようやく一段落して人心も落ち着き、さあがんばろうという時期。

    そういう「人と人とのつながり」こそが本来の人の姿である、としているのが青☆組ではないかと思うのだ。
    だから殺伐とした話になるはずもなく、「わかり合えないこと」があったとしても、「信頼できる関係」を築くことができる。

    この作品には、「家族ではない」つながりの人々が出てくる。
    従業員やお手伝いさんだ。
    しかし、彼らも「家族」の一員としてそこにいる。もうひとりの母、古い友、良き兄、弟として。
    だから楽しいこともあるが、苦しくなることもある。
    それこそが人と人とのつながりではないか、ということを示してくれている。

    東京タワーと同じ歳の私としては、この作品で描かれる生活や家族は、その時代(作品の時代には生まれてなかったりするが)に体験したものと比べてピンとはこないのだが(しゃべり方だったり台詞内の単語だっり)、その「空気」には懐かしさに似た匂いを感じる。「確かにそんな感じだった」「家族の会話」や「人々の佇まい」「居住まい」は、と。

    それは単なるノスタルジーではなく、「やっぱりそうなんだよな」という、反省にも似た感覚だ。
    つまり「人は自分を取り巻く人たちの幸福を願い、きちんとつながっていくのがいい」ということだ。

    しかし人とつながることは、甘い話だけではなく、例えば今回の作品で言えば、若いお手伝いさんの過去の話を聞き、求婚した男に「それでもいい」と軽々に言わせないところが、現実的である。こうしたエピソードが作品を物語の上からもきちっと締めている。
    登場人物を愛するあまりに、ここはハッピーエンドにしたいところだとは思うのだが、そうしないところが、吉田小夏さんの上手さではないだろうか。

    青☆組の公演は、吉祥寺シアターサイズの大きな劇場では、セットに高低差を作っている。
    これの使い方が非常に上手い。
    人の出し入れが左右、上下、さらに前後と立体的で、効果も上がっている。

    登場する役者さんたちはどの人も良かったのだが、特にお手伝いさん役の大西玲子さんが印象に残る。
    彼女は幼児からネコ(笑)まで演じる女優さんだが、今回は彼女の上手さが滲み出ていた。

    彼女の腰の据わり方がいいのだ。そこから見えるのは、この一家への愛情。
    全体が浮き足立つようなシーンの中にあっても、しっかりと腰を据えて立っている。
    そのことが作品全体にも効いているのではないだろうか。
    歳を重ねるごとに、さらに深みを増して良くなっていく役者さんではないかと感じた。
    今後が期待される。

    あと、やっぱり「歌」。
    青☆組の「歌」のシーンはいつもグッとくる。楽しいシーンであってもグッときてしまう。

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    2018/01/08 06:34

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