「彼女が最期に憂えたこと〜detective of the Victorian era〜」 公演情報 Project S.H「「彼女が最期に憂えたこと〜detective of the Victorian era〜」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     シャーロック・ホームズ物であるから、当然推理物だ。

    ネタバレBOX

    ワトソンとホームズの掛け合い、そしてホームズの推理の冴えが見所なのは無論だが、今作で感心させられたのは、単に推理の面白さ、見事さだけに終わらず、深く登場人物たちの人間性が描かれていたことである。ワトソン相手に披瀝されるホームズの推理は当に見事そのものだが、当該事件についての、犯人探しは存外容易い。
     然しながら、先にも挙げたように今作では人間性の掘り下げが深い。その点で特筆すべきものがあるのだ。
     舞台は19世紀ビクトリア女王の時代である。彼女の治世は60年以上に及んだが。その間、有名な切り裂きジャック事件が起こっており、ロンドンは魔窟と化していた。而も管轄の異なるシティーとヤードは、互いに覇権を競い容易に協力し合うことが無かった。為に一度事件を起こした犯人は、管轄の違うエリアに逃げ込めば現行犯逮捕を免れるというような制度的な問題も多発していた。今回、ホームズが引き受けたのは、当にこのような条件下で、この制度を悪用して起こされた事件であった。依頼人は若いお針子さんだ。余談になるが、ココシャネルも元お針子さんであった。まあ、美人であったから、亡命貴族の助けを借りたり、様々な紳士に助けられたりもあり、彼女のデザインセンスと主張の強さもあって、シャネルブランドを立ち上げてのし上がっていった訳だが。一方でフランスを占領したドイツ軍将校とつきあったり、スパイをしたりしたという側面も持つ。
     閑話休題、話を元に戻そう。個々のキャラクターに人間的深みを持たせている点についてだが、ホームズが推理の天才でありながら、その論理的思考故に、他人のメンタリティーを顧慮し得ない一種の片輪として描かれていることに始まり、医者でもあるワトソンは一方で可也の銃の使い手であることは、他の作品で描かれているから明らかなのだが、そのワトソンに道化をやらせてみたり、悲劇のヒロイン、イヴのキャラ設定がレミゼラブルのコレットに何処か被ってきたり、とドラマチックな要素がふんだんに含まれているのも良い。何が良いかって、新鮮なのである。こういう演出をしている演出家に拍手を送ると共に、舞台美術も如何にもビクトリア朝の佇まいを感じさせると共に、数々の場転に柔軟に対応し得る数多くの出捌けの作り方も合理的でその上センスが良い。シナリオの展開も安定しつつ自然に、さりとて緩むことなく話を盛り上げてくれる。ある人物の潔癖症は、その人物の傾向を巧みに示唆しているし、腐敗貴族の下司根性と狡猾も上手に織り込んでいる。そして貴族に利用されざるを得ぬ社会福祉活動家の苦悩も。
     翻って、トリクルダウンを恰も当然の如くノタマウ現代の資本屋及び彼らに諂う政治屋、官僚、メディア、マッポー、シカゴ派経済学者のうちグローバリゼーションを推進した者たち等下司の赤裸々な姿を重ねてみることも可能である。
     ところで、タイトルに入っている彼女とは誰のことか? 観劇後に考えてみるのも、推理物の愉しみの一つだろう。答えは、最後まで観れば分かる仕組みになっている。

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    2017/12/15 01:49

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