クロウズ 公演情報 スロウライダー「クロウズ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    不満な点はたくさんあるのだけれど、
    それを補って余りある“思い”の強さに圧倒された。解散してしまう、劇中の言葉を借りれば「滅びゆく」スロウライダー8年間の時間の詰まった、山中隆次郎の叫びにも似た“思い”に。途中から、ずっと泣きながら観てしまったよ…。

    ネタバレBOX

    序盤、正調なホラー映画、というかリビングデッドものとしてはじまるも、
    登場人物たちが逃げこむ山荘は舞台の奥に狭い空間しか占めておらず、
    メインのアクト・スペースはその前庭という状況で、
    どうやって物語を紡いでいくのか、いけるのか、なんだか心配にもなったんだけど、
    すべては杞憂。

    ああ、ゾンビ側を描くのね。
    しかも、とても人間的で、のほほんと脱力した雰囲気で。
    これが明らかになるところの音楽の使い方とか、上手すぎだよ!

    あと、その直前、
    人ならぬ動く屍に対して「ワタナベ!」と人間ながらゾンビ支援者のウロコが悲痛に叫ぶシーンで、早くもグッとくる。
    その一言で、人間とゾンビの共存を問う内容(←好み♪)だと瞬時に伝わってきたから。
    そして彼らゾンビは、ゾンビとしての生存本能すら抑え、あえて人間を喰らわない、という掟を作り、それを頑なに守ろうとし、そのためには滅亡すらも甘受し必至に耐えようとする、なんて設定も素敵すぎ。

    しかも、芸術家村を作るゾンビ、なんて展開も痺れる。
    すでに死者であるがゆえに不死の彼らは、満足のいく作品ができたら、消滅してもいいと誓うんだよねぇ…。
    いやあ、こんなにも優しく切なく気高いゾンビはみたことないよ!

    でもって、なんかそのあたりから、差別とかの話から、
    前作『トカゲを釣る‐改‐』と同様に、作・演出の山中隆次郎の創作活動への思いみたいなものが前面にでてきて。
    なにしろ、スロウライダーはこの公演を最後に解散してしまうわけで、そりゃあ、“思い”が溢れてくるのは当然で。

    なんてことを勝手に読み取り、同調していたので、ずっと泣きながら観ていたわけです、はい。

    もちろん、作品としては、虚構性の強い内容な分だけ、もっと観客が疑問に思って立ち止まってしまいがちな部分をしっかりと脚本的に潰しておかなければならなかったとは思うし、どの役者にもちゃんと見せ場を作るという劇団主宰的な配慮なんか捨てて、もっと、サトルとミツ、あるいはサトルとウロコに集約した物語をみせてくれれば良かったのに、なんて不満もあるのだけど。

    実際、サトル役の池田ヒロユキの立ち位置があまりに素晴らしくて、もっと彼中心でこの世界を観たかったなあ。
    しかし一方では、小狡い人間である河島役を飄々と演じた中川智明の演技も大好きなんで、もっと出番が多くてもよかったとかも思ってたりしますが(笑)。

    2

    2009/02/11 00:30

    0

    0

  • smさん、コメントありがとうございます!
    非常に嬉しいです。

    なにかが失われてしまうことよりも、
    伝えたいものが伝わっていないような感じがしたのが、じつは一番切なかったりします。
    その理由が、作り手か観客、どちらにあるかはわからないにしても。

    でも、そのうち楽しかった思い出に変容するのですね。
    よかった!

    2009/02/12 01:09

    ひなつさん、はじめまして!
    自分もこれまでに泣きながら観てしまった劇団が多くあります。
    寂しいけれども少し時期が過ぎると、
    夜中にいつでも楽しかった頃の思い出に浸れて、いつまでもいい時間が送れますよ。


    2009/02/11 01:33

このページのQRコードです。

拡大