I is ANOTHER ワタシは...他人 公演情報 シアターX(カイ)「I is ANOTHER ワタシは...他人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     オスロからやって来たグリソムヘテン劇団の作品。

    ネタバレBOX

    A.Rimbaudが1871年5月13日にGeorges Izambardに宛てた手紙の中に書いた有名な1行、Je est un autre.の英語訳がタイトルになった作品で、彼が19歳で詩を去った後、オランダの外人部隊を経、キプロスの採石場で助監督を経た後、遂にはイエメンのアデンで珈琲豆業者になって以降、マルセイユに戻って死ぬまでを、A.Artaudの解剖学的演劇の観点からの基本的インスピレーション復興を目指したパフォーマンスで表現しようとした。
     当然のこと乍ら、それはヨーロッパの個人主義的な伝統に則る形になったように思われる。例えば、冒頭、アデンのバザールの場面では、現地の人々を装った役者たちが、頭の上に壺などの荷物を載せて登場する者もあったのだが、自分も頭に荷物を載せて運ぶのが普通の場所で生活していて、今回役者が演じたような姿勢では絶対、ホントに重いには運べない、というのが余りにアカラサマで、このパフォーマンス自体をちょっと疑ってしまったのも事実である。呼吸法や、独自の発声法等も日本の役者とは異なる点も見られはしたが、矢張りヨーロッパで暮らした経験を持つ自分には、それはヨーロッパ流と映った。
     そういうことを意識した上で観劇するという態度で自分は拝見したということができる。その上で、Je est un autre.は、苦い認識には違いないが、天才じみた子供が大人になる時の気の狂わんばかりの重圧を通してみた、実存の相であるとの思いを再確認したに過ぎない。およそ150年近くも前の天才的ガキの書いた一行に振り回されるほど、自分達は軟だとすれば、これこそ問題であると言わねばなるまい。その意味で面白い試みであった。

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    2017/09/29 03:32

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