満足度★★★★★
この劇団の座付き作家、笠浦 静花さんは、かなり音韻に敏感な作家で、今作のタイトルにも、その特性が現れている。「すずめのなみだ」は微小なことを表す表現だが、それに「だん」を加えることで、単語相互の連関を通常のそれとは切り離し、同時に意味を一旦砕いた上で、新たな意味を付与している。もう一つの発明は、「だ」を重複的に用いてアクセントの位置をずらし、通常の意味とは別の新語を作り出していることだ。つまり「だだん」という耳慣れないことばに彼らの信仰対象である地面の意味を与えると共に、大地と対話する際に用いる掛け声としても用い、オープニングでその独特な所作と共に作品の中に観客を引き込んでいるのである。
言葉に対するこのようなチャレンジは、前々作「根も葉も漬けて」でより徹底して用いられていたのだが、今回は、観客にとってずっと分かり易く平易になっている。その分、だだん以外は総て平等な、だだんに対してのみ垂直社会を構成していたメンバー相互の徹底的な平等が、彼らの自由を保障し、戒律の絶対的自立と同時に自分の頭で考える為の思考方法を齎していた。即ち、我々の社会のように知を他者から伝えられ、他者に伝えてゆく横社会の方向への振れを大きく取っている社会の対極として想定されているのだ。一見、平等に見えるこの横型社会にヒエラルキーが生じている点も興味深い。社会構造の異質性をこのような形で提示すること自体、頗る哲学的な主題を含みいくらでも議論を深めることができるであろう。この辺りの作品の構造的な深さも注目に値する。とはいえ前置きはこれくらいにして、物語の概要を見てみよう。
(追記後送)
花五つ☆