笑顔。(すまいる) 公演情報 劇団光希「笑顔。(すまいる)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     東京近郊(とはいえ東京駅から電車を乗り継いでたっぷり100分ほどだから芝居1本分の尺)にあるうどん屋の名店「たまや」の名物おかみ、アキの顔色が最近、優れない。周りは注意しなけりゃ、とそれなりの配慮を促すのだが、頑固で自分の仕事に自信を持ち、しっかり者と自他共に認めるアキは、ちょっとした会話の行き違いも冗談を装ってやり過ごす。然し(少し追記9.9 更に追記9.19)

    ネタバレBOX


    事態はそう甘くは無かった。還暦を迎え誕生を祝って貰った翌朝、アキは、皆の前で頓珍漢なことを言いだしたのだった。この日は冗談だと言い張り、一応の収まりは着いたのだったが、その後もアキの言動がおかしかったり、食事を摂ったことを忘れて食後間もなくまた食事の準備をしたり、自慢の饂飩作りで味が悪くなったりと兆候は誤魔化しようがなくなる。偶々、近所の病院に転院してきた脳神経科の女医がこの店の饂飩が気に入ってしばしば立ち寄るようになって居た為、皆の説得もあって受診することになったが、若年性認知症と診断されてしまった。
     高齢化が進み、日本の現代社会で、認知症の家族・親族を抱える家庭は多い。実際、どの家でもその家系に認知症になった人が居ないというのは珍しいだろう。認知症の主たる症状は、兎に角、忘れる、ということだ。丁度、耳の上辺りにある海馬と呼ばれる部位が記憶を司る中枢なのだが、この部位に縮小が起こったり、脳全体が委縮することで起こる。他人事ではない認知症の進行と、患者が自分の誇りを傷つけられることを恐れる余り、様々に取り繕ったり、素っ頓狂なことを言いだしたり、財布の置き場所を忘れた結果、出会った誰彼を泥棒扱いしたり、他人は愚か家族の顔も見分けられなくなって、家族の方が傷ついたり、徘徊を繰り返すようになったりと、兎に角、独りにさせておけないので、家族の誰かが必ず家に残っているか、施設に預ける外に道が失くなってしまう為、家族の心理的・経済的負担も並大抵ではない。
     一般的には以上のようなことが言える訳だが、その辺り、光希らしい内容になっているのは、アキの周囲が極めて温かく彼女を見守りサポートする姿が描かれているからである。忘れっぽくなったとはいえ、アキの人を見る目の確かさがスワ食い逃げ! と疑われた時にも、また詐欺に引っ掛かって店を失うという懸念が生じたときにも結局は見込まれた客の善意が返ってくるという展開で終息する。同時に彼女の認知症は増々進行し徘徊や、夜中に天麩羅を揚げだしてぼやを起こすなどが入れ子細工に演じられるので、観客は、展開に引き付けられ飽きることがない。またここで描かれることが、人を信じることの強さ・尊さに繋がってゆくので、庶民の生活感覚を伴いつつ描かれる顛末の温かさ、優しさが心を撃つ。光希劇団員の他、客演の役者陣も力のある役者が多く脚本、演出、演技もバランスが取れている。舞台美術もしっかり作り込まれ、ぼやのシーンでは屋台崩し迄表現してあったのもグーだ。無論、音響・照明の効果も良い。

    6

    2017/09/08 10:49

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  • クララと梅太郎はできちゃった婚だったのですか!なるほど…この時代にすごいですね。
    私も読んでみようと思います(^^)

    2017/09/21 11:42

    ハンダラ様
    いつもながら、詳細なご意見ご感想をいただき、本当にありがとうございます!
    おかげさまで、今回の公演では、多くの方からいろいろな反響をいただきました。
    今の世の中、認知症と介護の問題を多くの人々が抱えていらっしゃるのだな、と改めて思い知った次第です。
    このようなセンシティブな内容だからこそ、いつもに増して、お客様目線に立った作劇を心がけました。
    ごく普通の家族が、親の介護という問題に直面し、悩み、もめて、ばらばらになってしまう。
    それでもやはりほうってはおけず、家族だけでなく周りの人々も一緒になって、寄り添い、助けあって生きるさまを、力強く描いていきたかったのです。
    認知症の未来に、希望はあるのか?
    大変悩みましたが、やはりどんな苦しい病を抱えても、精一杯生きてほしい、そこにきっと希望はあるのだと、私たちは信じたいです。
    その思いから「人を見る目確かだったんだね、母さん」という終わり方を選びました。
    認知症になってもその人の本質は変わらない。
    お母さんの「人を信じる真心」が、結果として自分も周りの人も救ったのだと…
    その思いを、十分に受け止めてくださって、とてもうれしく思います。
    どうもありがとうございました。

    この物語の家族は、人の善意によって救われましたが、現実を生きる人々にとっては、やはり政治などの力も重要でしょう。
    これで終わりではなく、どうするべきなのか考え、これからの表現に繋げていきたいと思います。
    これからもがんばりますので、どうぞよろしくお願いいたします!



    2017/09/21 11:39

    みかんさん
    大変遅くなりましたが、追記最終版アップしておきました。
    お待たせしました。
     クララと梅太郎はできちゃった婚で、勝家でなければ
    大騒ぎになっていたでしょうね。自分は未だ読んでいないのですが、
    クララは明治日記という本を書いてもいるそうで、これも一度読んで
    みる気になりました。また。
                        ハンダラ 拝

    2017/09/19 18:03

    追記もう少々お待ちください。
            ハンダラ

    2017/09/13 02:49

    ハンダラ様、いつもありがとうございます!
    追記お待ちしております<(_ _)>

    2017/09/12 23:56

    また後で追記します

    2017/09/09 10:57

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