アイバノ☆シナリオ 公演情報 BuzzFestTheater「アイバノ☆シナリオ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     雨が、降ったり止んだりしている。傘を差している人々は、雨の降り具合で3割から5割という中、劇場へ向かった。受付扉前には、雨に濡れた観客に衣服の濡れや肌の濡れを拭えるようにハンカチーフのような乾布を手渡してくれるスタッフが立っている。微妙な天気の変化に対応する心尽くしが有難い。(この言葉の原義通り、有り難しのレベルである)実に気の利いた対応に、気の利く観客なら総てが頗る良い印象を持ったことだろう。(表舞台のみならず、裏方を含めた全員一丸となって良い舞台を作る、小劇場演劇の鏡)

    ネタバレBOX


     さて、小屋に入った。指定席であったが、目の悪い自分の状況を慮って席の位置をキチンと受付で教えて頂いた。気が利くというのはこういうことを言う。親切であるばかりではなく、顔と名前を察知し適確な対応をしてくれる頭の良さが心地良い。すべからくこのような頭の働きを持った、而も善意の人が応対してくれることが、序盤での観客のリラックスに繋がる。とても大切なステップなのである。無論、それが押し付けでなく自然であることが肝要であり、その兼ね合いには、経験と経験をベースにした分析、的確な判断が必要なことは言うまでもない。
     さて劇場に入って早目に来た観客が最初に興味を持って見るのは、舞台美術である。隙が無い。下手奥に逆L字型に据えられたバーカウンター、その上手にはいくつかの階段の上に踊り場が設えられている。設定が網走のスナックの店内なのでカラオケステージとして使われることもあれば、店外のとある場所として用いられることもある。良く練られたシナリオの展開の妙を見事に脚色した演出が、状況の進展にぴったりの展開で場を盛り上げつつプロットを積み上げてくる。スナックの客達・ホステスのカラオケデュエットを含め、話の節目に入る主人公、アイバの失踪した彼のオリジナルソングは、その曲想と歌詞で観客の心を撃つ内容のものである。二千に近い小劇場演劇を観てきて、初めて曲のCDを買いたいと思ったほどいい曲であった。貧乏な自分はシナリオを買うと余裕が無く泣く泣く諦めた次第である。
     良く練られたシナリオに優れた演出。そして役者陣の演技の質は、ホントに観客の想像力を刺激し、キチンとシナリオと観客のイマジネイションの最大化を図ることができるほどのレベル。こんな演技をしてくれた役者が何人も居た。船頭・豊川役の藤馬 ゆうやさん、銀行員・宮國役の前 すすむさん、猟師と双子の曽我部兄弟役を演じた菅沼 岳さん、朱音を演じた山本 真由美さん、朱音の弟、卓馬を演じた飯田 太極さんらの演技は特に気に入った。主人公、相場を演じた川村 ゆきえさんがラストに近い所で嘆くシーンは、ちょっとオーバーに感じたが。(発狂するほどの嘆きは、無声慟哭になるような気がするので。)船頭・豊川を争う過程で、婚約者・千秋を演じたちすんさん、自殺を前に躊躇う男・達郎を演じたかめや 卓和さんらもいい味を出していた。御名前を挙げなかった役者さんたちも自然な、役柄に合った演技をしていたことは無論である。
     

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    2017/07/26 01:54

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