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孤独の観察
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公演情報
シアターノーチラス「
孤独の観察
」の観てきた!クチコミとコメント
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ハンダラ(10489)
満足度
★★★★
9年前に起きた大量死傷・刺殺事件にインスパイアされて綴られた今作。
ネタバレBOX
人間関係を築く力を失ってしまった現代の決して少なくは無い人々の孤独・孤立と、寂しさを抱えて苦悩する人間との差異を正確に見極めて描く秀作。果たして我々は寂しいのか? 或いはそれすら感じられない程孤立し、漂流していることにも気付かぬほど関係を欠いた存在なのか? ものと人の境界を問い掛ける作品でもある。深読みをすれば、関係を欠いた人間はそも人間という範疇に括ることができるのか? という問題迄提起さえしていると解釈することも可能だろう。
物語は、高校卒業12年後の結婚式場の待合場所で展開する。新婚カップルは高校の同級生同士。高校時代は唯のクラスメイトだったのだが、3年前に偶然出会ったことから交際に発展、結婚に至ったという経緯だ。新婦には高校時代4人の友人が居ていつもつるんでいたのだが、内1人が高3で亡くなっていた。比奈という名であった。引っ込み思案の子で、それが嵩じて人付き合いがまともにできず、ネット上で繋がる誰とも知らぬ人々とチャットで連絡を取り合う時だけ活き活きしていた。そんな彼女に懸想していたのが、この度結婚することになった新郎の雅也である。雅也の孤独も孤立の深さから、他人との正常な関係を築くには至らぬものであり、その意味で人間的な人格形成は疎外されていた。雅也は、こんな状態から比奈に恋心に似た何かを本能的に感じたというのが正確な所であろう。何れにせよ、ストーカー紛いの行為に及んでいたのだが、その深い孤立から、恋に恋するというレベルの相手へのアプローチのノウハウも分からず、ぶきっちょにもストーカー紛いの行為に及んでいた訳だ。
ところで仲良し5人組で既に結婚したのは、涼子1人。問題は、涼子の夫がDVを揮うことであるが、涼子は、子供の頃から皆の引き立て役。内心皆から一段低く見られることに悔しい思いは抱きながらも納得せざるを得ない、と諦めかけていた。然し無論のことながら、その心の奥底では悔しくてならなかった。そんな彼女を対等の人間として扱ってくれた初めての人こそ、彼女の夫であった。暴力を揮うことはあっても、見下されるより対等の存在として自分に対してくれる夫を決して憎む気にはなれないのであった。確かにDVは良くない。それは当たり前のことである。然し、内心軽蔑しながら、友人面する欺瞞は果たして正しいか? を問うならば、どちらの関係が人間に幸せを齎すかはかなり難しい問題であろう。新婦、亜季を除く2人(親分肌の千絵、研究者を目指すセリ)は独身のままである。
高校時代の夢が実現しているか否かは語られないものの、2人を含め皆性格が変化したとは感じられない再会であった。これら結婚式関係者以外の登場人物が1人いる。亡くなった比奈の姉、成美である。彼女も集まった他の人々の殆ども、比奈の死についての真相は知らない。ただ、比奈が無差別殺人を犯そうとしていた人物の犯行を止める為に、約束していた8月12日の涼子の誕生パーティーをドタキャンした時、厳しくそれを追求し、参加しないなら、今後、皆が比奈を無視し続けることを突き付け、何で誕生会を欠席するのかについて詰問した千絵の詰問の状況について、皆で一緒に行動していれば比奈が亡くなることはなかったと口裏合わせしているのは、如何にも在りそうな共犯関係であり、実際に罪を犯している訳ではないものの、その事実が各人に問い掛ける道徳的問いに悩む姿は必然であろう。同時に、比奈の姉が12年間、妹の死について「犯人」と思しき人物を追い掛け回し、かなりの手応えを得、状況分析から確信するに至った妹の死の容疑者が、3年前偶然に出会ったことになっている新婦との出会いの真相も示唆されている点、比奈が亡くなる場面の再現シーンなどから見えることは、殺人犯より重い病を患っているのは、寧ろ孤立する孤独者なのではないか? という重大な疑義である。この疑義については作品をご覧あれ。
客席が舞台を挟むサンドイッチ構造になっており鰻の寝床のように長辺の比率が著しく大きいので、客席によっては、役者の演技している表情が見えない。(例えばオープニング直後の女子たちが全員集まって件の話をする時などだ)本筋に関わるシーンなので無理に椅子に掛けず立ったままでの会話にしても良いのではないか? 自然な雰囲気を出すのなら小さな1本脚の丸テーブルを用意してドリンクセットでも載せておけば良い。こうしておけば、役者が顔をあちこち動かしても不自然にはなるまい。科白の順番で、どの観客にも観易い配置を取れば良いのである。それから、役柄によっては、高校卒業後自分の語った夢を実現したか否かが、ハッキリ見えた方が効果的な役柄もあろう。こういった所に注文を付ける演出をしてゆくと、更に深い作品に仕上がるのではなかろうか?
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2017/07/13 00:53
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