りんぷん手帖 公演情報 やみ・あがりシアター「りんぷん手帖」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     この劇団を拝見するのは今回で3回目。今、自分が若手劇団の中で最も注目している劇団である。兎に角、切り口が毎回新鮮で斬新。
    オープニングで明転すると、椅子やテーブルが段ボール製であることが即座に分かる。テーブルに至っては足の部分がミシュランのタイヤマンのように輪切りの円筒を積み重ねてあるのだが、重心をしっかり取った上で最大限相互がずれているのである。従って視覚的には非常に不安定でありながら、物理的には安定しており、その物理法則と視覚とのギャップが既に舞台上の緊張を先取りする形で提示されている訳である。(追記2017.5.15) 断固観るべし!! 花5つ☆

    ネタバレBOX

    ここに主婦友グループ、少女時代からの親友グループが交差邂逅するという劇の劇たる成立事情がさりげなく織り込まれている。実に本質的である。
     だが、一方で描き方にも捻りが加えられている。時系列を敢えて混乱させているのである。当然、関係は、不確かになる。即ち存在の裸形、儚さが強調されるという訳だ。その儚さこそが、生命の営みの本質であるなら出会いは即ち切なさそのものである。その切なさを面倒くさい、と遠ざけていた間、山口(アロエ)は存在感を保っていられたのだが、面倒を避ける為に合理的であった彼女は、松田(もんしろちょう)の嘘をきっかけに桜田(マロニー)の嘘も含めて人間の負の部分にも気付かされ、抽象的世界観から具体的世界観への窓を開かれる。すると、儚さそのものであったもんしろちょうとの関係が逆転する。ここには、蝶が卵・幼虫・蛹・成虫へと変身してゆくイマージュがある。同時にマロニーが商っている麻薬と鱗粉、麻薬の齎す幻覚などのイマージュが微妙に交差しつつ、ジャンクフードを食べる階層とドラッグの関係も透けて見えるのだ。更にサッカー選手を夫に持つ森(運動嫌いちゃん)は、華やかに見えるスポーツ界・芸能・マスコミ界等の虚妄性を示唆してもいよう。みー、けいの女友達同士もかなり擦れ違い要素を持つ。儚い命を懸命に守ろうとする者が絶望の果てに総てが嘘だ! と断定したくなるような、世界の只中に唯一登場する男性、ともくんは、主婦友と同級生との蝶番。で何を訴えているかというと、今回は、切なさを描いて秀逸! そう自分は捉えた。

    0

    2017/05/14 02:33

    1

    0

このページのQRコードです。

拡大