風車〜かざぐるま〜 公演情報 ものづくり計画「風車〜かざぐるま〜」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    分断から
     三部作の最終章ということのようだが、自分は第一部、二部とも拝見していない。無論、それでも独立性は保たれているので、観劇に問題は全然なかった。

    ネタバレBOX

     舞台は瀬戸内海に浮かぶ小島の物語である。どの地方も過疎化と高齢化に悩み、具体的な成功手法を見出せず、その多くは原発関連の交付金や国からの交付金目当てで、本当に地元に必要なことでなくとも、目先の便利さや豊かさに目を晦まされて真の問題に目を向けようとする力に結集し得ていない。このことが、子供をこれから作り育てて行こうとする世代の、核汚染に纏わる嘘や見識などまるでない政治屋共への不信感を背景に対立を育ててゆく。無論、先行世代の中にも若者と似た危機感を持つ者達が居る。多くの場合、それは自然を深く知っていると同時に世界との関係を知る者達である。そういう民衆の代表に漁師などが位置するであろう。実際、今作でも原発に反対している知恵ある爺さんは、漁師である。漁師は、仮に今は瀬戸内海の漁師であっても、若い頃には鮪漁船に乗ってマーシャル海域で仕事をしていた者も居るであろうし、地球表面積の7割を占める海で生きる以上、外界との接触可能性の中で物を見、考える。ここが、その原住地に縛られる百姓との決定的違いである。どちらが優れているとか居ないとかの話ではなく、職業差は意識的に克服してゆくべきなのである。そのパースペクティブを持てるか持てないかの違いでもある。若者にとって、可能性が大である方が無論選択肢の上位を占める。生きてゆかねばならぬのであるから。自分達の子供を産み・育てることを含めて。今作はこのような対立を主軸としつつも、現実に起こる具体的な事例をつぶさに展開している点で評価できよう。島へ新たに定住したいという希望者獲得の為に非常識にも、対立の一方の旗頭であった人物が死んだ、というデマを流して島を離れた人々の結集を図るなどという悲惨で滑稽な話が具体化している点に過疎の深刻な有様が見て取れる。
     面白く感じたのは、舞台奥に描かれた漫画チックでダサイ絵が、終盤いい絵に見えてくる点である。分裂していた島民たちに再び融和とパースペクティブが戻って来た証として、笑顔に溢れたこの絵が未来を指し示すものとして見えてくる。

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    2016/11/19 12:30

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