震えた声はそこに落ちて 公演情報 劇団時間制作「震えた声はそこに落ちて」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    Aチームを拝見
     舞台は町中の大衆食堂のたかまつ。この店にはラジオ番組で人気のパーソナリティー、岬が良く来る。

    ネタバレBOX

    岬の人気の秘密は、聴者からの悩み事に親身になって応える姿勢とその適確なアドバイスだ。また、たかまつ食堂の女将・百合は、岬の学校時代の後輩に当たる。在る時、岬の下に気に掛かる便りが届いた。無論、番組宛であったから、岬はその手紙を読み上げた。その内容は特異なものだった。何でも友達のできなかった投稿者は、中学時代に初めて声を掛けられたクラスメイトと仲良くなったというのだった。だが、その後、彼からある依頼が来た。それは、他人の人生を壊す依頼であったが、友人を失うことを恐怖した彼は、その頼まれごとを引き受けてしまった。結果、被害者は精神的ダメージから口をきけない状態が続いている。何とか償いたいが、どのように償えば良いかが分からないという相談だった。岬は、生涯を掛けてその人の為に尽くすという案を提示する。ある日、たかまつ食堂に偽名を使ってやって来た男佐藤は、アルバイトとして採用され、この食堂で働きだした。声を失った琴子は彼の余りにもぎこちない言動が可笑しくて笑いを取り戻した。
    ところで、主犯の孝道は少年院を出て侘びに来たが、自分が何故、謝らなければならないかに納得ができていない。というのも、彼の家は、琴子らの父の経営する会社の子会社で、仕事を切られて破産、父も失っていたからである。自分の家族をめちゃくちゃにした連中がどんな暮らしをしているのかを観に彼は時々たかまつ食堂に来ていた。そして彼らの温かい家庭や笑える暮らしを心底羨んだ。そこで、琴子を誘拐し自室に監禁したのであった。然し、事件を負うことが恐ろしくなって琴子のバッグをたかまつ食堂からは遠く離れた地元の友人である佐藤に送り、佐藤は、それを愛知県内に捨てて捜査をかく乱したのであった。
    当初、主犯が誰であるかは分かっていたのだが、従犯が誰であるのかは分かっていなかった。たかまつ食堂で働き始めた佐藤を謝りに来た孝道が見つけ総てが明らかになったのである。然し、被害者である琴子は、佐藤も許すことができなかった。結果的に彼女の声を取り戻させたのが佐藤であっても、彼女は佐藤にさよならを言わなければならなかった。
    それなりに、筋の通ったシナリオだが、現実はもっとシビアだろうと思う。また、孝道は非常に人間的な感情を持っていて、未成年で若い女性を誘拐する事件を起こしながらレイプもしていない、というのは余りにも不自然だ。彼がLGBTという設定なり何なりを入れた方が良いように思う。犯罪が社会を映す鏡であるのは、その犯罪者の持っている歪が時代そのものだからであろう。その辺りで孝道には歪が余りない。犯罪を犯すにはちょっと情緒的に過ぎると感じるのである。取材をもっとしっかりやって欲しい。

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    2016/11/08 21:46

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