『哀れ、兵士』 公演情報 フェスティバル/トーキョー実行委員会「『哀れ、兵士』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    日本語字幕だが観れる(ら抜きで悪いか)
    うまい。演技が的確でシーンが端的で無駄がなく、ステージ上部の字幕を見ながらの観劇でも、伝わる。観れる。
    兵士とはどのような存在か・・犠牲者の観点から、望まぬ加害者という観点から描いている。だから「哀れ」な存在。
    舞台処理がうまく、俳優が必要な芝居をきちんと(笑わせるタイミングも)やっている。
    劇団コルモッキルは日本との演劇交流の実績のある劇団(私は初見)だが、若い俳優が一回り年上の母役をやったりもしていて、「若い集団」の印象が強い。若い作演出家が、年上の俳優を使うのは韓国では難しいのかな・・などと想像したりしたが、堂々たる舞台だった。

    ネタバレBOX

    大東亜戦争時の日本のシーンもある。朝鮮人が軍役を志願し、知覧飛行場から特攻として沖縄へ飛び立つ・・。戦後のある時(年代はいつだったか)軍から逃亡し非業の最期を遂げる・・。2003年イラク戦争への支援を決めた韓国政府の方針に従い、食糧供給のため食品会社に勤務する青年がイラクで人質となる・・そして彼が素朴な心を持つ一民間人に過ぎない事に心が揺らぎ、正義を行なう勇気を与えたもうとアラーに祈る、米軍による「大義なき殺戮」で家族を失った女兵士・・。2010年に起こった巡視鑑攻撃で犠牲になった亡き兵士と生き残った兵士のエピソード・・(攻撃した側の国名「北朝鮮」を出さず、国務に殉じた兵士の姿に焦点を当てていた)。
    日本のシーンは的確にシーンが構成されており、酒の注ぎ方や兄弟や親への接し方などは韓国式だったが、天皇の軍隊として命を捧げるのだから、家族は皆立派な日本人だ(そのために兄は死地へ赴く)・・というくだりは、戦後日本政府が無慈悲にも半島出身者を「外国人」として社会的権利を剥奪した事実が重ね合わさり、「哀れ」極まりない。

    4つの内の一つ、船上で殉死した韓国兵士のエピソードだけは日本人には収まりが悪い。攻撃した相手に矛先を向けないとすれば、美談に包み込むしかやり所がなく、国家に殉じる兵士を顕彰する、というのは日本ではどうにもきな臭い感じが拭えない。が、韓国での「国家」の捉え方は若干違うかも知れない。
    軍政時代はともかく、民主化運動で軍事独裁を倒し民主的な政府を実現させた歴史は、国家意識、国民意識が異なると考えられる。
    また、祖国分断の悲劇は歴史的にみれば「北朝鮮」という悪しき国家(指導者金日成?)によってもたらされたのではなく、大国の都合の産物だという事は韓国の良識のようである。従って潜在的内戦状況にある朝鮮半島での軍事的悲劇の責任は、必ずしも攻撃した相手=北朝鮮だけに帰せられない・・という感覚を、一旦飲み込まねば、このエピソードを正しく咀嚼できないように思う(観ている間自分がそうだった)。
    ・・彼我の違いはあれど、普遍性の高い作品・表現に会場は大きな拍手に包まれていた。(個人的には、あまり普遍的な味わいに均すより、「韓国的」な部分を味わいたい願望が強いけれど)

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    2016/10/30 01:59

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