遠い国から来た、良き日 公演情報 ワンツーワークス「遠い国から来た、良き日」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    紛争地 花四つ星
    の住民の生活を覗き見、難民キャンプも可也見て回っている自分にとっては、戦闘シーンや残虐な描写が随分抑えられ、リアリティーには欠けたが、それでも日本の一般の人々にとってはかなりショックを受けた人々も居るハズ。

    ネタバレBOX

    一般日本人向けの良く出来た教科書という感じであった。無論、主人公、ベフルーズが、飛翔するミサイルに似た大きな音、空爆の破壊音に怯えたり、被ばく者の写真を見て気持ちが悪くなってしまうなどのトラウマを紛争地の多くの子供が抱え、悪夢、夜尿症、不眠、神経症、時に失語、精神分裂などの症状を呈するのは事実であり、ケアを受ける過程で将来なりたいものを訊かれると医者、ジャーナリスト、教師などの答えが多いのも事実である。如何に彼らが、自分達の置かれた状況に真剣に向き合っているかは、彼らに遇ってみれば直ぐに分かることだ。(こういった事例については、自分も難民の子供達に直接向き合って数百人の子供たちの反応を直接見聞きしている。)中学生くらいの子が、アラビア語以外に英語やフランス語を話したり、パレスチナに於いては必要からヘブライ語をこなす者も居る。知的にも精神的にも日本の同世代の子供より遥かに大人である。日本は、日本会議の下司共がいくら美しい日本などと美辞麗句を並べた所で、QSの2016大学世界ランキングでも去年から5つ上昇した東大の34位1つ上昇した京大の37位、と日本を代表する大学でこの程度の評価。アジアではシンガポールのシンガポール国立大12位、13位で同じシンガポールの南洋理工大にも遠く及ばない。日本の頭の悪い為政者共もソクラテスの弁証法に敗れ、詭弁の代名詞となったソフィストの真似など好い加減に止めるが良い。受験時のペーパーテストの結果が良いだけでは、ヒトのその後の成長は計れない。人は他者に揉まれて成長するのである。その事実をこの物語は良く示している。ベフルーズという名はペルシア語で”良き日”を意味するという。彼は様々な武田レオからの嫌がらせにも基本的に暴力で対応しない。虐殺された母の形見のスカーフを何度も踏みにじられた時でさえ、堪えに堪えた後、体当たりして取り返しただけである。その伏線は、作中至る所に鏤められていた。ファーストシーンにアザーンが流れ、武装集団に属することになった兄と共に組織メンバーの前に連れ出された彼と兄の様子で、無論、それは察せられる。その後もアラブの代表的な弦楽器ウードの、人の心情を切々と訴えるような音色に、爆弾を仕込んだベストを脱ぎ、逃げれば兄が死ぬことになると恫喝されたにも関わらず、人ごみの方には投げず逃げろ! と声を挙げながら他人の居ない方向へ投げたこと。その時破片で自ら傷を負ったことなど。他人に殺される怖さも、他人を殺す恐怖も味わった彼の、だからこそ、明日は昨日と同じであってはいけないという強い思いが、医者になって故郷に戻り、傷ついた人々を一人でも多く助けたいという彼の希望を支えている点にも注目したいのだ。
     唯、ちょっと気になった単語がある。自爆テロという単語だ。通常海外メディアはsuicide attackとか suicide bombingという表現が多く用いられているように思う。ISが、劣勢になってからは殊にこの方法を活用するようになったのは事実である。然し、ISを産んだのはアメリカの戦争犯罪とイラク破壊による世界武器市場への宣伝(アメリカの軍産複合体による)と戦中、戦闘終了宣言後イラク国内の混乱を利用しての、治安維持名目や国家軍事予算の名目移転という誤魔化しにより、民間移転した軍兵(特殊部隊兵士を多く含む。ブラックウォーターなど)による民衆虐殺、レイプ、イラク国宝の略奪(これはイラク戦争中にも米兵によって行われていたし多くは未だに返還されていない)、使われたDU弾による極めて凄まじい核汚染(α線による被害が多い為、内部被ばくになることが多い。(それが、ICRPをはじめ、IAEAに逆らえないWHOなどが、内部被ばくを一切問題にしない原因であろう。無論、このDU被害に関してはDU弾が使われた総ての地域の医師、看護師などの医療研究・従事者、そして良心的な科学者が問題を提起し続けている。その地域とは、ヨーロッパではコソボ、中東では湾岸戦争時に汚染されたイラク南部(バスラを含む)、アフガニスタンなどであり、使用した米軍兵士もDU汚染で後遺症を患い、子供に障害児を抱
    える退役軍人が居る。)イラク戦争では更に大量のDU弾が首都バクダッドでも用いられたが、その後の混乱で医学的データを収集整理するまでには至っていないようである。)
     イラク関係では、まだまだ言わなければならないことがあるのだが、アメリカのイラク占領で最も大きな失敗は、それまでイラクを支配してきたスンニ派を総て公職追放したことだろう。確かにフセインは、シーア派を弾圧したり、クルドを弾圧したりはした。秘密警察が、国民を監視していたのも事実である。然し、民衆レベルではシーア派もスンニ派もお隣同士で仲良くしていたし、殺す、殺されるなどということは考えさえ及ばなかったのも事実である。それが、アメリカの占領政策の失敗により、傀儡マリキ政権の下、クルドのペシュメルガ、シーア派民兵が、スンニ派住民を拉致しては凄まじい拷問に掛けて惨殺してきた。そこでスンニ派も自衛の為に軍事組織化していったという経緯は無視できない。それらが離合集散してとどの詰まりISに結集していったのだ。無論、ISの中には旧アルカイーダの人々も紛れ込むことになった。
     ところで、日本でベルフーズを受け入れる地域となったのが広島であることは意義深い。いじられキャラのヤスミの兄がISに参加しようと企てるのは、TVでアラブ関連のドキュメンタリーを多数見、就職試験に落ちまくっていることから簡単に見通せるが、その兄のエクスキューズについては、実際、日本社会の事大主義と事大主義をベースにした一面的なレッテル貼りのマイナス面を良く表していて興味深い。同時に、日本人の甘さ、甘え、弱者に対する想像力の欠如も良く表していて面白い。その点では、ベルフーズのクラスメイトであるレオのスタンドプレーと狭い了見に根差したプライドの嗤うべき浅さも通底していよう。

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    2016/10/18 16:43

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