ゲシュタルト家の崩壊 公演情報 めがね堂「ゲシュタルト家の崩壊」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    面白い!
    極上のサスペンス・ミステリーという印象である。説明にある「難しいことはおきません。ある家族の崩壊を覗くだけ」とあるが、その観せ方が秀逸である。
    少しネタバレになるかもしれないが、文章(脚本)倒置法を利用したような展開で、終盤までその謎を引っ張る力は見事であった。
    公演全体に不気味な雰囲気が漂い、謎の展開と相まって緊密感が…。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    基本的に室内と屋外(路上)という場面構成である。舞台上は室内という設定で、上手側にテーブルと椅子、下手側にソファーとローテーブルが置かれている。屋外は、客席中央通路を路上に見立て、何度か客席後方から登場する。この小空間を最大限に利用し物語の情景・状況を立体化しているようだ。この部屋は高層階にあり、その遠望は素晴らしいと...同じ窓から見える景色が東京タワーであり、スカイツリーでもある。その辻褄が合わない台詞など、ちょっとした状況や言葉に謎が隠されているようで、それを見逃すまいと物語に集中する。

    さて、物語は倒置したような展開で始まる。
    冒頭、消えた妻を探して雨の夜道をさまよい歩き、 家族を構成する部分が遊離した男(職業・作家)の顛末...実は若かりし頃に遡って話が始まるのだが、今の境遇を強く印象付ける。本公演の場合は、その謎を序盤で展開させ、どうしてそうなって行くのかという過程を順々に観せる。そうすることで、サスペンス・ミステリーの世界に容易に引き込むことが出来る。実に巧みな構成であった。

    有名作家の娘と結婚した男、自分は文才があると信じ原稿を書くが締め切りに間に合いそうにない。そのため妻が代わって執筆してしまい、その小説が話題になり賞まで受賞した。以降、男の代わりに妻が執筆する。この妻の父に結婚を申し込んだ際、将来作家になると言っていたが...。父の才能を受け継いでいた妻への嫉妬、自分への嫌悪のような感情の沸々。

    義理姉やその夫から消息の手掛かりになる写真(アルバム)を入手。さらに興信所へ妻の捜索を依頼する。その際も(正面)写真の提供を依頼される。本当の妻の顔とは...正面からの写真がない=妻と向き合っていたのか、という暗示のようでもある。消息場面に風俗勤務なども挿入し意味深さを増す。
    これらの謎を妻本人が、夫のゴーストライターであることを新人ルポライターに暴露する形で解き明かす。この1人称語りという手法がシンプルかつ説得力があり観応え十分であった。

    緊密感の中に小さな笑いも織り込む。例えば、妻の顔写真を卒業アルバムから、それも集合写真から探すなど有り得ないだろう。しかもそのページを客席に見せる。緊密さに適度な弛緩の挿入バランスも巧い。

    次回公演も楽しみにしております。

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    2016/10/17 19:02

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