魔法処女☆えるざ(30) 公演情報 劇団だるめしあん「魔法処女☆えるざ(30)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    女子演劇の愉しさ
    「劇作家女子会!R」での短編が所見。観劇二作目で、<エロ・ポップ・ファンタジー路線>には脚本もさる事、女優河南由良の存在も大きいな、という今回の感想。
    短編(前回)は一呼吸で書いたかと思わせるような、隙のない流れの良い台本だったところ、中・長編(今回)では・・・期待通り。流れの良い自然な場面配置で話を先へと押し進めていた。
    ただ、短編にあった、現代の生を抉る痛快さは控えめとなり、主人公の「痛さ」(30にして処女)の一点に集約させ、その事をめぐっての挑戦と挫折、期待と落胆の紆余曲折を物語るドラマとなっている。落しどころは設けているが、ポップで楽しい→感動の領域へとドラマを進めているにしては、もう一掘りほしい気がする。「エロ楽しい」路線のほうに比重を置きたいなら、エロ的にももう一掘りほしくなる。
    うまいだけにその「もう一つ何か」が欲しくなるのは、役者達が十分に立ち回っている分だけ(俳優として表現に到達しようとする苦悩が滲んでいない分だけ?)、薄味であるせいだろうか・・。

    ネタバレBOX

    30歳魔女(=処女)のえるざの一人称の視線で話は進行する。ジジ、じゃない飼い猫(名忘れ)が唯一全てを語れる対話相手(実際に話す)で、恋愛に関しては猫連中の方が良きアドバイザーであったりするが、一定の距離はあってやはりえるざの物語、となっている。そこで彼女に関わる人物たちの言動は、彼女にとってどういう意味を持ったか(どう見えたか)、の演技にとどまり、シンプルで明快な演技が判りやすい。ただしリアルからは離れ、彼女の視界の「向こう側」のリアルは推し量りにくい。
    が、えるざの物語が力強く成立するなら、結果オーライである。
    処女卒業(=恋愛)か魔法か、という二者択一は、結婚か仕事かの構図に似ている。人は子を産み育てるために生まれてくるのか?(そうだと言った瞬間、その資格から排除される者が数値として弾き出される。)
     彼女にとって魔法は便利な付加価値は持つが、人生にとっては負の価値である。そうであったのが、愛する者のために最後は空を飛んで見せる。このラストは彼女の人生にとっての解決だとは見えない、けれども、人のために使う「魔法」というものを見出したのだとしたら、価値の転換の到来を告げるラストであり、そこまでのものでなくとも、瞬間の輝きをみせる美しいラストだ。
     であるので、このシーンが「空を飛ぶ」事への根源的な意味、その感覚(世界が広がる幸福感)を示すものであったら・・・と思った。
    (・・具体的には、冒頭でみせるコミカルな「飛ぶ」場面、これは背後の壇上で行うが、最後も同じく壇上に登り、猫もまたがる二人乗りで「横向き」に行なう。これを舞台中央・・前面か奥か・・で輝く照明の中、風を切って少女時代の表情をみせて終わりたいなぁ・・・と。実際の舞台では、とんびが前面で、えるざが背後。その姿をみて彼が悩みを払拭する(かつてのように・・)、となっている。がもし彼が中央で演じるのなら、えるざの姿を想像させるような極上の表情=見せ場!を演じてほしい)
    ・・・などとリクエストが出てしまうが、作り手はそこまでの感動を想定していないのかも?

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    2016/09/19 00:22

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