最悪な大人 公演情報 劇団献身「最悪な大人」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    縦横無尽な人間観察
    冒頭、夫婦でネコを捨てるシーンがあるが、バカバカしい設定で、これからの芝居に危惧を抱いた。しかし場面転換した途端、物語性が強くなりストーリーに絡みつくようなギャグが味わい深く感じられる。
    主宰・奥村徹也氏が実際働いた経験を基に描いたシチュエーション・コメディは秀逸。

    ネタバレBOX

    舞台セットは、奥の舞台を遮るように仕切板(衝立)が何枚か立っている。この仕切板を背に夫婦がネコを捨てに来る。猫を捨てに来たのに人間の赤ん坊を拾って連れ帰るところから始まる。この時1995年秋。

    舞台転換は、この仕切板を折りたたむようにして後ろ舞台の壁を作る。その手際の良さは素晴らしい。そこに出現したのが、運送会社(営業所)の事務室。上手にはロッカー、その横のドアは発送室へ通じるらしい。中央奥は外部への出入り口、下手には所長机、女性社員の机。pc、棚、白板、スケジュールボードも見える。けっこうリアルである。

    父は、TVで一時話題になった大食い番組で、フードファイターとして有名になりかけていた。しかし、そのTV番組を真似た子が大食いで事故死するに至り、父の生活は一転。同時に夫婦の間に亀裂が生じて離婚。
    拾われた息子はかつてヒーローだった父の面影を探すが、現実は思うようにいかず引き籠りに...。どうにか、今は父親が勤める運送会社(営業所)でバイトをしている。捨てられていた日から21年...息子は21歳(2016年)
    その営業所に、ある日一人の客が怒鳴り込んきて、ドタバタ騒動が...。

    この男をヤクザと勘違いし、そのクレーム対応に見られる人間の本性。どこにでもいそうな人物を責任逃れ、自己本位、傍観者などに類型化して笑いに包みながらシニカルに描く。ちなみに、迷惑な性癖もあるようだ。
    さて、クレーム対応のシュミレーションを繰り返し、その虚実が分からなくなる。この繰り返しという演出はどうだろうか。観客によってはくどく、飽きることにならないだろうか。確かにシュミレーションは違うがクレーム相手は同じ。
    また上階の女性の登場も関係性において...劇中台詞にもあったが関係者ではない。できれば、クレーム相手やその内容に変化があると面白かった。例えばクール便の放置、時間指定のルーズさ、アダルト商品を奥さんへ渡して夫婦騒動へ発展など...。その中でより人間の本質が見えるようだが。

    この会社(社会)と父子(家族)という極大と極小という単位の間を目まぐるしく往還するような滑稽無稽な作術があってもよかった。それによってギャクの連発も底流にある物語性に支えられてキレも増すような気がした。そして奇妙なリアリティも生まれるのでは...。物語は続き、或出来事を経て5年後…息子・太陽26歳と父の関係に未来が見える。

    次回公演を楽しみにしております。

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    2016/06/06 07:19

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