それは言わない約束 公演情報 かーんず企画「それは言わない約束」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    華が欲しい
     大学を卒業後、商社に就職が決まった息子。

    ネタバレBOX

    父は著名作家・里見 潤一で居間には原稿を受け取りに来る編集者が、締切だ・原稿依頼だ・相談だと言っては押しかける。未だに手書き原稿スタイルで押し通すだけの力のある私小説作家で、無論、いくつか大きな賞も取っている。妻・順子は若く美しい。私小説作家であるから、無論、創作部分があるにせよ、夫婦の関係も基本的には事実であると読者には思われている。
     出入りしている編集者たちの中に大学時代にはステディーであり、かつ、同人誌編集長と副編集長だった男女があった。男が編集長、成績も男の方が良かった。にも拘わらず就職先の出版社は規模の違い、売れ行きの違いから女の給料は男の倍。おまけに担当作家が同じという皮肉な状態にあった。この関係が面白くない男は、作家の息子に私小説を書かせ、父母の真実を世間に知らせようと図る。息子の母は、謂わば娼婦。呼び出されれば従いて行って男と寝る。父母初めての出会いは、当にそのような関係であり、潤一はステディーが居たのに、この女と何度も寝るうち、妊娠させていた。順子は結婚を迫り、男は愛しても居ない女と結婚して生涯を過ごすこととなったのだが、この秘密を息子は暴いたのだった。然し、原稿は本になる直前父に見つかり、作家は編集者に圧力を掛けて出版はされないこととなった。
     真実が明かされて、空虚そのものを抱えて生きることの空しさがひしひしと伝わる。
     シナリオ、舞台美術、演技もしっかりしているし演出も良いのであるが惜しむらくは華がない。

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    2016/05/09 02:49

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